ゴー宣ネット道場

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小林よしのり
2015.1.19 13:38

オウム真理教事件で学んだこと


オウム真理教の地下鉄サリン事件からもう20年経つという。

上祐元幹部が裁判に証言者として出廷したらしいが、

あの頃はわしが「事件はオウムの仕業だ」と『ゴー宣』で

描くと、「上祐さんはそんな人じゃない」「青山さんは悪い人

のはずがない」と、わしに抗議する葉書が殺到したものだ。

信者である若者たちが、「純粋」に見えたからだろう。

 

オウムの信者は純粋な信仰者であり、社会は教団に対して

不当なバッシングをしている、警察は不当逮捕している、

続発するテロ事件の最中も、そう主張する者は多かった。

特に、サヨク・リベラル系の知識人、文化人に。

 

わしはオウム真理教に名誉棄損で訴えられ、裁判闘争を

しながら、同時に暗殺部隊に尾行される日々が続いていた

ので、そんな空論に付き合っておく余裕はなかった。

 

オウム信者は近代合理主義に背を向けた、質素で真面目な

純粋な人たちばかりだ、オタク文化を取り入れた子供の宗教

だと、人畜無害なイメージを、知識人たちは宣伝していたが、

無害どころか、無差別殺傷テロを起こす狂団に成り果てていた。

 

閉ざされた団体は恐ろしいのだ。

無条件に擁護する知識人は、いざと言うときには、

その責任を取らねばならない。

 

サヨク・リベラル系の文化人は「弱者」「少数者」

そして「周縁の者たち」に感情移入する。

無条件で信用し、擁護する。

「純粋な教団」があると信じる。

「純粋な団体」があると信じる。

「純粋な民族」がいると信じる。

これを批判する者は「悪」にしか見えない。

 

弱者を守るときは「主観」に埋没してはいけない。

感情に流されてはいけない。

「かわいそうに、気の毒に」と単なるヒューマニズムで

「主観」に埋没すると、とんでもない過ちを起こすこと

だってあるのだ。

 

わしだって弱者を守る戦いは、今までしてきた。

薬害エイズの犠牲になった子供たちを守る戦いもした。

部落差別とも、在日差別とも、戦ってきた。

だが同時に、本当に弱者か否か、疑う「客観性」も

失わない。

オウム真理教の事件で学んだことは、知識人・文化人の

「疑う」力の希薄さだった。

 

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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