ゴー宣ネット道場

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高森明勅
2015.9.24 02:04

古本屋で売っている最古の古書

家内が「面白い番組がネットに挙がってるよ」と教えてくれた。

こんなことは、珍しい。

所ジョージの番組で、日本一の古本の街、神保町で売っている
最古の古書を探す企画だという。

私が興味を持ちそうだと思ったのだろう。

即座に、
最古と言えば、百万塔陀羅尼(ひゃくまんとうだらに)かな。
奈良時代に印刷された物だけど、数多く作られたから、
今もたまに古本屋が売りに出す。

以前も、専門家向けの古書目録で見かけたことがある」と話すと
一瞬、絶句。

「売りに出していた店って、八木書店?」と聞いてくる。

確か、そうだったかな」と答えた。

八木書店は一誠堂などと並び、神保町を代表する古書店。

でも、そんなこと家内は知らないず。

ははぁん、番組に出ていたな、と見当がつく。

前に目録を見た時、大枚はたいて購入しようかと、
チラッと迷ったという話は勿論、口に出さない。

天平宝字8年(764)の恵美押勝(えみのおしかつ)の乱後、
第48代称徳天皇の発願で100万基の木製の小型の三重塔が
造られた。

全てが完成したのは宝亀元年(770)。

法隆寺、薬師寺、興福寺、東大寺などの大寺に安置。

その塔の中に、紙に印刷した4種類の陀羅尼経を納めた。

年代が明らかな現存する印刷物としては、世界最古クラス。

ヨーロッパでは印刷の開始自体が、ずっと後の14世紀。

シナの刊本でも、大英博物館に収める金剛般若経(868年)
あたりが最古の部類だろう。

シナ以外の地域では、12世紀より遡るものは、殆ど見当たらない。

番組では杉田玄白訳の『解体新書』や『貞永式目』
の版本などを
取り上げた後、
最後にしっかり八木書店で扱っている百万塔陀羅尼に
たどり着いた

さすがに、それが世界レベルでも飛び抜けて古い、
という事実までは触れなかったが。

真面目にきちんとに制作した番組だと分かる。

ちゃんとした番組じゃないか」と感心すると、家内も少し満足げ。

ちなみに頒価は1200万円。

これを安いと感じるか、高いと感じるかは、人それぞれだろう。

かなり前に、私が目録で見た時の値段は、
もう少し安かったような気がする。

なお、法隆寺には今も4500点余り(!)
の百万塔陀羅尼が現存している。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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