ゴー宣ネット道場

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高森明勅
2016.5.1 07:00

呆れ果てた「西尾・加地」対談(4)

誤解のないように予め断っておく。

私は別に、“皇室への無知”それ自体を非難するつもりはない。

そうではなく、無知であるにも拘わらず、「諫言」だとかへったくれ
だとか称して、
皇室へのバッシングに狂奔する悪質な振る舞いを、
批判するだけ。

それを前提に言えば、加地伸行氏の無知さ加減は殆ど“底無し”。

何しろ次のように述べているのだ。

「私の考えでは、皇太子殿下は摂政におなりになって、国事行為の
大半をなさればいい。ただし、
皇太子はやめるということです。
皇太子には現秋篠宮殿下がおなりになればよいと思います。

摂政は事実上の天皇です。
しかも仕事はご夫妻でなく1人でなさるわけですから、
雅子妃は病気治療に専念できる。

そして陛下は皇室祭祀に専念なさる」

腰が抜けるほどのトンデモ発言だ。

まず摂政への就任順序は、皇太子が第1位と皇室典範に規定する
(第17条)。

だから、「私(加地氏)の考え」など関係ない。

但し、摂政は天皇の国事行為を全面的に代行する立場(憲法第5条)
だから、摂政を立てるのは天皇が未成年か、
精神若しくは身体の重患又は事故により国事に関する行為を
みずか
らすることができないとき」(典範第16条)に限られる。

摂政を置くということは事実上、天皇陛下に畏れ多くも
“当事者能力無し”と宣告をするに等しい。

全くあり得ないどころか、そのような議論を持ち出すこと自体、
陛下に対する不敬の極み。

ご負担の大きい「皇室祭祀に専念」して戴ける状態で摂政を
設けるなど、到底あり得ない。

一体、何を考えているのか。

しかも「皇太子殿下は…国事行為の“大半”をなされば」
などということもあり得ない。

摂政は、国事行為を“全て”代行されるのだ。

更に、摂政には“皇太子”としてご就任になるのであって、
「皇太子はやめる」
ということもあり得ない。

逆にもし皇太子でなくなるなら、摂政には就けない。

皇太子でなくなるというのは、皇位継承の順序を変更するということ。

それは皇太子殿下に
精神若しくは身体の不治の重患があり、又は重大な事故があるとき」
に限る(典範第3条)。

重大な事故」というのは「天皇の地位につかれることが適当でない
と考へられる種類及び程度
の非行乃至(ないし)重大な過失…失踪」
等で「
殆ど絶対に回復すべからざる事故」を指す
(法制局「
皇室典範に関する想定問答」)。

皇位継承の順序を勝手に変更するばかりか、天皇陛
下に事実上の
“退位”を迫るというのは、もはや反逆・
謀叛に近い。

「雅子妃は病気治療に専念できる」というだけの理由で、
かくも重大な皇室への冒涜的行為を、
恥知らずにも提案するとは。

殆ど正気を疑う。

皇位の尊厳を何と心得ているのか。

しかも、皇太子殿下が摂政に就任されたら雅子妃殿下が
「治療に専念」
できて、皇太子のままならそれができないという
前提自体、
全く成り立たない。

別に摂政だから「仕事は1人でなさる」という訳ではなく、
又、
皇太子だから妃殿下とご一緒でなければならない訳でも
決してない
からだ(にも拘らずご療養中の妃殿下に、無理やり
ご公務を強要しようとしているのは、西尾氏らだろう)。

むしろ摂政は、天皇の全面的な代行者として、
皇太子より遥かに重い地位だから、妃殿下のご負担がより一層
大きくなるのは確実。

何ともトンマな話だ。

今、妃殿下は皇太子殿下とご一緒に、懸命にご快復への道を
歩まれている。

そのことは、ご公務へのお取り組みのご様子は勿論、毎年、
お誕生日に際してご発表になるお言葉の変遷からも、明瞭に
拝察できる。

心ある国民は、ご快癒の1日も早からんことを、
静かに祈るべきだろう。

一部メディアの“
為にする”事実無根の悪質な皇室報道や、「諫言」
だの何だのと、
不遜かつ無知、無責任な言動が蔓延っていること
こそが、
これまでご快復を妨げて来た軽視し難い要因だったと
考えられる。

従って、何よりもそれらを止めさせることが肝要だ。

(続く)

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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