ゴー宣ネット道場

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高森明勅
2016.5.1 13:29

呆れ果てた「西尾・加地」対談(5)

このテーマもそろそろ打ち止めにしよう。

既にこれまでの指摘で、西尾幹二・加地伸行両氏の対談の“水準”が、
ほぼ明らかになっただろうから。

しかし、どうしても見逃せないのは以前、『週刊新潮』
平成25年6月20日号)に極めて不敬かつ悪質な記事が
掲載されたのを、
両氏が今頃になって諸手を挙げて賛成していること。

西尾氏はこう述べる。

「(同記事によると)天皇陛下、皇太子殿下、秋篠宮殿下の頂上会談
があり、
次代はまず皇太子殿下にご即位いただき、その後速やかに
悠仁親王殿下に皇位を継承していただくという方向
に決したという
趣旨でした。
『幼帝』ですね。
私も名案と感服しました。
…でも、その後続報はありません」と。

同記事については当時、『WiLL』
同年9月号で私がその信憑性を
徹底批判した(拙著『皇室論』
に収録)。

全くの虚偽報道。

だから当然、「続報はありません」となる。

普通に考えてみれば分かるはずだ。

皇室典範は「譲位」も、即位の「辞退」も、厳格に否定している。

加地氏はこれを
不備があるともいえるので、退位論が出ても皇室会議が認めるか
どうか」などと述べる。

2人揃って無知さ“全開”。

そもそも皇室会議には、典範が否定している退位を議題にしたり、
審議したり、
議決する権限はない。

当たり前だ。

万一、皇室会議で(メンバー全員が発狂するなどして?)退位を認める
議決をしても勿論、法的には全く無効。

これは「不備」なんかではない。

皇室典範の制定に当たり十分検討の上、明確に否定されたのだ。

この点については当時、宮内省文書課長で法制局参事官などを
兼務した高尾亮一氏が以下の
ように整理している。

仮りに退位の自由をいかなる形式にせよ認めることとすれば、
相対的に不就任の自由も認めなければ首尾一貫したものと言い難い
…血統による継承において不就位の自由を規定したならば、
その確認のために空位又は不安定なる摂位(代理による即位)
という事実の起こるのを防止できず、万一継承者のすべてが就位を
拒否するという事態に至るならば、
天皇という制度は存立の基礎を
揺り動かされることになるのである

世襲による就位は自由意思の介入と調和しがたい」
(「皇室典範の制定経過」)と。

この2人は、一旦「自由意思の介入」を認めた場合、
悠仁殿下ご本人が即位を辞退される可能性を、
全く考えていないのか。

その瞬間に、皇室はそれまでの長い歴史を閉じることになろう
(だから反天皇勢力は、
これまで退位と即位辞退の容認を、執拗に
主張して来た)。

それとも、皇太子殿下が退位され、
秋篠宮殿下も即位を辞退される
自由は認めても、
悠仁殿下だけは辞退が認められない根拠を、説得力
を持って示すことができるのか。

その上、仮に悠仁殿下が「幼帝」として即位された場合、
未成年の天皇だから無論、
摂政が立てられる。

もとより、譲位を否定している今の典範には、こうしたケースは
全く想定されていないが、その時、
摂政に就任されるのは誰か。

血縁の近さからは秋篠宮殿下だが、天皇への即位自体すら辞退と
仮定されているので、
摂政就任も辞退となろう。

そうすると、やはり今の皇太子殿下が就任されることになる。

一体、何の為の譲位か。

それとも両氏は、未成年の天皇には摂政が設けられることすら、
知らなかったのか。

そもそも、
熱意と責任感を持って真摯かつ誠実にご公務に取り組んで
おられる
皇太子殿下が即位後、早々と退位されねばならない理由が
どこにあるのか。

両氏の議論は、
およそ活字にするレベルに達していないと
言うべきだろう。

この他、
「テレビ画面に見える限り、愛子さまは笑わない」
加地氏)とか、
「雅子妃は伝統文化に拒絶反応をお持ち」(西尾氏)
とか、
口から出任せを並べている。

敬宮(としのみや)殿下の明るい笑顔は映像でもお写真でも、
いくらも拝見できる。

又、雅子妃殿下の和歌の素晴らしさは、
皇室に僅かでも関心を寄せる
人なら、
よく承知している事実だろう。

例えば平成26年の歌会始め(お題は「静」)では、次のような御歌
を詠(よ)んでおられる。

悲しみも 包みこむごと 釜石の 海は静かに 水たたへたり」。

今年(平成28年)の歌会始め(お題は「人」)

「ふるさとの 復興願ひて 語りあふ 若人たちの まなざしは澄む」。

お気持ちがよく伝わって来る。

調べも清澄だ。

対談の小見出しに「歌を詠めない妃殿下」とある。

どこに目を付けているのか。

西尾氏はご療養中の雅子妃殿下に対し、
夢幻空間の宇宙人みたいになっています」などと、
悪罵を投げつけている。

今時、確信犯の反天皇左翼でも、ここまでの暴言は吐かないだろう。

私には、むしろ両氏こそ「夢幻空間の宇宙人」に見える。

はっきり言っておく。

こうした悪質なデマに基づく無礼、
不遜な雅子妃殿下への
バッシングが繰
り返されるなら、将来、皇室に嫁ごうとする女性は
二度と現れなくなるだろう。

それが一体、何を意味するか。

両氏以外なら、誰でも理解できるはずだ。

(終わり)

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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