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小林よしのり
2016.8.24 00:16経済

見えない貧困、見えない富裕を捉える感性


現代の貧困は「見えない貧困」である。

「可視化されない貧困」について、我々は想像力を働かせ

なければならない。

 

『おぼっちゃまくん』の「貧ぼっちゃま」は後ろ半分が

まる裸のスーツを着ているが、あれはギャグ漫画であって、

あんなに分かりやすい貧乏人はどこにもいない。

 

最近のホームレスになった若者の格好は、ホリエモンや

ひろゆきと大して変わらないし、飢え死にするわけには

いかないから、仕事は探しているだろうが、仕事にあり

つくには、スマホは必需品かもしれない。

 

若者ホームレスは、昔のようにボロをまとって、髪も髭も

伸び放題で、汚れで顔が真っ黒というような恰好をして、

「いざりでござい」と言ってくれない。

「ひろゆきでござい」と言われたら、金持ちと間違うかも

しれない。

 

貧困層も富裕層も「可視化されない」時代になったという

現実認識ができない者が、ネトウヨ体質の者には多い。

感性が鈍いからであり、時代遅れなのだ。

 

部屋の中に、いくら細々したグッズがあっても、家庭に

入る年収が少なければ、進学もできないし、パソコンも

買えない。

グッズやモノの入手のし方も、最近ではいろいろ方法が

あって、大してカネはかからない。

供給過多になってるから、デフレから脱出できないし、

個人消費が伸びないのである。

 

ひろゆきと貧困若者の見た目の差がないという現実に

いいかげん気づかねばならない。

 

貧困は社会のせいじゃなくて、自己責任だという考えが

一般的になるほど、新自由主義はこの国に浸透したのかも

しれないが、ならば中間層が崩壊した現代では、もはや

結婚もできない、子供も産めない、少子化は進む、いずれ

移民を増やすという流れは止められないだろう。

 

要は国のかたちに関する問題であって、貧困家庭の子供が

「可哀想」という単純なレベルの話ではない。

ハングリー精神は高度経済成長の時代の産物であり、

昔の根性論を振り回してもまったく意味がないのである。

わしより若い者が、なぜわしより感性が鈍いのか?

さっぱり分からん。

 

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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