ゴー宣ネット道場

BLOGブログ
倉持麟太郎
2016.11.12 12:37

トランプと日本国憲法どちらが”切り札”??

去る日本時間11月9日の大統領選において、ドナルド・トランプ氏(以下「トランプ」!)が勝利した。
外交・安全保障はもちろん、政治家としての経験がないトランプが、いったいどういった政権運営をしていくのか、非常に興味深い。
ここで気になるのは、やはりトランプが大統領になったときに、我が日本にどのような影響があるのか、ということである。
あまり分野を拡散しても何なので、日本の憲法論議との関係で考えてみたい。

トランプ以前の”ワシントン”は、日本が憲法改正することには反対(望んでいない)であったし、とにかく何でも(特に外交・安保は)「なし崩し的に」進めてもらいたい、という意図があった。これに対して日本も「仰せのままに」なし崩しで進めてきた。2014年の限定的集団的自衛権の解禁の閣議決定及び2015年の安保法制はその最たるものだろう。
アメリカからすれば、日本の軍事的協力に際して、憲法改正などという政治的インパクト・摩擦などまったく不必要であるし、同時に、そもそもアメリカの根源には、日本は「敵国」であるという認識があり、日本の自主独立路線は忌避すべき道なのである。
もちろん、憲法改正は、昨今の政権回りの人々の思想と併せ読んでも「自主独立」の表出であることは間違いない。

では、これらについてトランプはどのように考えているのか
・日本は自主防衛をすべきだ
・そのために核武装もやむなし
・沖縄については撤退するか負担を加重すべし
etc…
トランプの主張は非常にドメスティックであり、今までの”ワシントン”の問題意識や思考プロセスを共有していないある種無関心・無知な態度である。
今までは、日本の外務省等もアメリカの空気を読んで、なし崩し的に進めていたものが、もしかすると、トランプ政権下では、アメリカ側の空気を読む必要がなくなるかもしれない。
つまり、トランプがそっぽを向いている間に、「改憲せずになし崩し」ではなく、やっとアメリカからの注文を度外視して、憲法論議・改憲論議ができるのではないか、ということである。

昨年の安保法制における存立危機事態(限定的集団的自衛権)・重要影響事態(後方支援)・米軍等の武器等防護における武器使用等、9条改正を経ないまま、「なし崩し的」にごり押しした結果、

・存立危機事態?こんなもの発動できないし、したとしてもベニスの商人的な矛盾を抱えている
・後方支援?後方支援拡大によって従前の個別的自衛権の範囲を狭め、我が国防衛を減縮してしまった。
・米軍等の武器等防護?米軍の艦船や戦闘機を「自衛官」が守るというおかしな建付け
といった具合に、全く使えないか、我が国防衛を後退させたか、すべての責任を自衛官個人にしわ寄せたか、という不協和音を生み出してしまった。

また、南スーダンへのPKO派遣についても、PKOは1999年の国連事務総長告示以来、「戦うPKO」と化し、PKOを枕詞にした「国際貢献」は「交戦」とセット・表裏一体となっている(つまり、これ以降のPKOに参加した自衛隊派遣はすべて憲法9条及びPKO5原則からしてアウトである。だから民主党政権もアウト)。こんなところ(南スーダンは、2016年7月に、首都ジュバで政府軍VS反政府軍の衝突により250人余りが死亡する「戦闘行為」があった。)に「交戦権」の無い自衛隊が入っていくので、政府は何があっても派遣先は「安全」で”国内法上”「戦闘行為」と評価する事態は発生していない、などと強弁し続けるしかなくなっている。1992年のPKO法成立から、PKOであれば「交戦権」の問題を迂回できると思っていた政府は、もはや紛争の激化とPKOの役割の変化(停戦監視等?住民保護)にもかかわらず、憲法9条と向き合うことなく、激化する世界の紛争にも自衛隊を派遣し、9条があるからこそ、自衛隊がいくところはすべて「安全」と言い切る欺瞞を続けなければならない。防衛や国際貢献についてこんな不真面目かつ不誠実な態度でいいのか。

今こそ、トランプが内向きな視点で戯言を言っている間に、9条を中心とした適切な改憲論議をし、この国の防衛及び国際貢献について、日本が真に「自主独立」の視点からすべきことは何なのか、ということを熟議できる風通しの良い言論フォーラムを醸成していくべきである。

そしてまた、トランプがドメスティックにな思考をしている間に、日本において風通しの良い自主独立的な改憲議論がなされれば、それはいわゆる”ワシントン”としては、頭の痛いことのはずである。日本の改憲論議が、”ワシントン”とトランプの緊張関係を生む可能性もある。このドメスティックな緊張関係は、日本としてはアメリカとの外交安全保障論議のカードにすらなりうるのである。
こう考えると、トランプは日本の自主独立的な日本国憲法論議にとって、そして、日本国憲法の真にリアルな論議はいわゆる”ワシントン”とトランプを含めた総体としてのアメリカとの交渉にとって、双方にとって双方が”trump(切り札)”になる可能性がある。

お後がよろしいようで

倉持麟太郎

慶応義塾⼤学法学部卒業、 中央⼤学法科⼤学院修了 2012年弁護⼠登録 (第⼆東京弁護⼠会)
日本弁護士連合会憲法問題対策本部幹事。東京MX「モーニングクロ ス」レギュラーコメンテーター、。2015年衆議院平和安全法制特別委員会公聴会で参考⼈として意⾒陳述、同年World forum for Democracy (欧州評議会主催)にてSpeakerとして参加。2017年度アメリカ国務省International Visitor Leadership Program(IVLP)招聘、朝日新聞言論サイトWEBRONZAレギュラー執筆等、幅広く活動中。

次回の開催予定

INFORMATIONお知らせ