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笹幸恵
2016.12.28 04:56

どの口が言うのかね?

第七回の「退位」有識者会議の

議事概要の要旨が、昨日の読売に掲載されていた。

海外の事例について紹介されている。

ここ最近のものだけ挙げてみよう。

( )内は退位年月日

 

〇憲法・法律に基づき退位

オランダ ベアトリックス女王 75歳(2013.4.30

 

〇特別法によって退位

スペイン フアン・カルロス1世 76歳(2014.6.19

 

〇憲法・法律の規定を根拠とせずに退位

ベルギー アルベール2世 79歳(2013.7.21

 

いずれも退位の理由は「高齢・健康」と「円滑な王位継承」。

 

ベルギーの場合、そもそも法律に生前退位を定めた規定はない。

しかし戦後に退位の前例があります。

 

2代前のレオポルド3世は第二次大戦中のナチス寄りの

言動が問題になって、国王支持派と反対派とに国論が二分。

内戦の危機を避けるために退位。

 

後を継いだボードワン1世は、敬虔なカトリック教徒。

議会を通過した人口妊娠中絶合法化の法案に対し、署名を拒否、

苦肉の策として一時的に退位。

その後復活、亡くなるまで在位。

 

いずれも立憲君主制を守るため、臨機応変(?)に対応した結果でしょう。

 

我が国が進めようとしている特例法のケースに近いのは、

特別法によって退位したスペインのカルロス1世でしょうか。

しかし彼は健康上の不安のほか、王族内の不祥事などで

国民の支持が低迷していたところで「生前退位」を発表しました。

すでに民心が離れていたのです。

君主制そのものに反対する国民のデモも起きたというから、

日本とは全く事情が違います。

 

さて、有識者会議の討議の内容をみると、
そんなことはお構いなしに特例法容認論が出てきます。

 

「憲法は明示的に退位を禁止しているわけではなく、

法が一つの法を補強する例もこれまでにいろいろある。

憲法上、特例法によって皇室典範を補足・追補していくことは、

法理論として十分可能ではないか」

 

「皇室典範に根拠を持つ特例法で末代まで適用可能にする法形式や、

皇室典範の付則で陛下だけに適用するという法形式も可能だ」

 

皇室典範を補足するなら、なぜ改正を検討しないのだろう、
という素朴な疑問がわきますが、有識者会議では誰一人
疑問に思わないのでしょうか。

皇室典範に根拠を持つ特例法? 意味不明。
どうしても皇室典範には触れずに、政府の希望する
特例法という結論にもっていきたいらしい。バカバカしい。

 

思わず笑ってしまったのが、こんなご意見。

 

「国民から見た天皇ということから議論が出発すると

考えれば、世論調査の結果は、我々の結論を導く上での

大きな要素の一つになるのではないか」

 

11月の日本世論調査会の発表によると、法整備について

「今後の全ての天皇を対象にしたほうがよい」70

「今の天皇陛下に限ったほうがよい」26

 

女性・女系天皇や女性宮家について、

有識者会議で「議論したほうがよい」82

 

特例法では、まるっきり世論を無視していることになりますよ。

 

世論調査の結果は、我々の結論を導く上での大きな要素の一つになる

 

・・・どの口が言う?

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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