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高森明勅
2017.3.8 22:00

皇室会議の議決という退位要件

これまで私らが提案して来た退位の要件は3つ。

(1)皇嗣が成年に達していること。
(2)天皇のご意思に基づくこと
他からの不当な干渉を排除すること)。
(3)
皇室会議の議決によること。

どれも当たり前の要件ばかり。

ところが、いくつか批判もある。

(1)については、さすがに異論はない。

又、(2)への批判については既に反論した。
と言うより、
これを否定すれば「強制」退位“しか”認めない事に
なってしまう。

(3)についても異見があるとか。
次のような指摘だ。

(ア)皇室会議は皇族や三権の長で構成されているから、
天皇の国政関与禁止”や“三権分立”に照らして不適当。
(イ)
皇室会議ではなく、国会の議決によるべし。
そこで念の為に、
それらについても検討しておく。

まず(ア)について。
既に触れたように今の制度では、皇室会議は「皇位継承順序の変更」
や「摂政の設置」などの決定に関わる。
それが天皇の国政関与禁止とか三権分立に抵触するとして
問題視さ
れることはなかった。
ならば、退位についても同様だ。

次に(イ)について。
まず前提として、皇室会議は
「精神若(も)
しくは身体の(不治の)重患」
(皇室典範第3条、第16条第
2項)の“客観的な事実認定”
行うだけの機関という誤解がある。
だが、そうではない。
重大な事故」(同前)の判定も行う。
「重大な事故」とは何か。

具体的には
天皇の地位につかれることが適当でないと考へられる
種類及び程度
の非行乃至(ないし)重大な過失をいふ」
(法制局「
皇室典範案に関する想定問答」)。

従って、その判定にはかなり微妙な要素も含まれ得る。
そうであれば、
上記事案の決定を行う皇室会議が、
退位の決定に関与するのが相応しくないという判断には、
決してならない。

翻って、退位の決定を行うのはどのような組織であるべきか。
次の諸点を兼ね備えていることが求められる。

1、国民意識が反映される。
2、政治的介入を回避出来る。
3、
皇室のご意向が反映出来る。
4、
退位の対象となる天皇個人の情報が保護される。
5、
極めて高度かつ慎重な判断を行うことが期待出来る
メンバーで構成
されている。

皇室会議はまさにそうした条件に適合する。
少なくとも、皇室会議以外にそれらの条件を全て兼ね備えた機関は、
今の我が国には見出だせない。

率直に言って、国会は上に掲げた諸条件の1以外をクリアするのは、
至難。

皇室会議の議決を“経
た上で”、最終的に国会でそれを
承認するか否かを決めて、
皇室会議の議決を一層オーソライズする
という手続きを、
要件として新たに付け加えることは、
検討の余地があるかも知れない。

だが、皇室会議での審議と議決を抜かして、
いきなり国会に判断を求めるのは妥当ではない。

このように検討すると、退位「3要件」
の妥当性を改めて
確認することが出来る。

それに、新たな要件を追加する“足し算”はあり得ても、
どれかの要件を外す“引き算”はあり得ない。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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