ゴー宣ネット道場

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高森明勅
2017.6.5 22:00

求婚は女性から!

古事記のイザナキ・イザナミ神話にこんな場面がある。

天(あめ)の御柱(みはしら)を立てて、
イザナミの命(みこと)
が右から回り、
イザナキの命が左から回って、
両神が出会った時に、
まず女神から相手を褒める言葉を掛けて結婚したので、
水蛭子(
ひるこ、不具の子)が生まれた。

女が先に声を掛けたのが悪かった、と。

これは男尊女卑的な印象が強く、
前後とは描き方がやや異質。

かねてシナ文献の影響が具体的に指摘されて来た。

例えば、『洞玄子』には
「天は左転して、地は右廻す
。…男は唱えて、
女は和す。
…故に必ずすべからく男は左転して、
女は右廻すべし」
とある等々。

日本書紀(第4段第10の一書)には、
女神が先に声を掛けて、
普通に淡路島を産んだ神話を収める。

こちらが「原型」と見られている。

…といったこと等は一切、知らないまま、
「女人先唱(にょにんせんしょう)の戒め」
物事は女性が先導するとロクなことがない)という、
古代シナ思想の受け売りを、あたかも日本神話の“尊い”
メッセージであるかのように錯覚して、
しきりに有難がる向きがある。

でも間違い。

古事記神話なら、
むしろ目を向けたいのは稲羽(いなば)の
八上(やかみ)
ヒメの物語。

大国主神話の一場面だ。

大国主神の兄弟“八十神(やそかみ=多くの神々)”達が、
出雲からはるばる稲羽まで美人の誉れ高い八上ヒメを
求婚に出かけ
る。

だが、八上ヒメは「あなた達の申し出は皆、断る」と、
それら大勢の神々をたった一言で“振る”。

だけでなく「私は大国主神と結婚する」と、
勝手に相手を指名し、
その通り結婚している
後に正妻のスセリビメを畏れて国許に帰るが)。

こちらはシナ思想の影響を全く受けていない。

どうやら、わが国の固有の思想では
「女人先唱の戒め」なんてくそ食らえ、
ということだったらしい。

それが気弱な男どもにとって明るいニュースなのか、
それとも逆なのかはともかく
私の身近にも女性が先導して結婚に至り、
幸せそうにされている方がいる)。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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