ゴー宣ネット道場

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切通理作
2018.1.31 06:45

「ギャグにハゲはつきものである」!?

 
ライジングの「ギャグに差別はつきものである」とても面白かったです。

芸人さんたちのかつてヒットしたネタひとつひとつに「差別であるか」どうか含めて、その面白さを解説していく小林さんの語り口は、さながらテレビお笑い史の総まくり速射砲トークでした。

 

と思っていたら、最後の方で映画監督の西村善廣さんがゴー宣ネット道場配信番組『せつないかもしれない』に出てくれた時に発言した「欧米ではハゲネタは伝わらない」が参照されていてビックリ。欧米で「ハゲ」は精力の強い、つまり野性味の象徴のカッコ良さとして捉えられていると、私もこの時知りました。

 

ハゲと言えば思い出すのは、松田優作主演のテレビドラマ『探偵物語』で、西洋貴族のようにふるまうダンディな怪盗(和製ドラキュラでも知られる岸田森演じる)と松田優作がフェンシング対決していると、ポーンとある物体が飛んでくる。それは対決の途中で外れた怪盗のカツラ。さっきまでカッコよかった怪盗が一転、ツルっぱげの三枚目になるというオチ。

 

「キザ男と対決中、ハゲだったことがわかる」というのは、ガンダムで知られる富野由悠季監督のロボットアニメにも同時期あったオチですが、ポイントは、戦いの勝敗がつく以前に「ハゲ」がバレたとたん、本人にとっては「敗北」を意味していることです。

 

つまりそういう描写がある回は、殺伐としていないのです。

実際の欧米では、通じないギャグだったのかもしれませんが、西洋貴族風の敵が己の美学にこだわるがゆえに、そこがウイークポイントになってしまう姿は、可愛げがあって憎めないものを感じました。こうした展開も「今じゃやれないよね」フォルダに入ってしまっているのでしたら、ちょっとさびしい気もします。

 

いま全国順次公開している私の監督した映画『青春夜話』では、映画監督の友松直之さんに、一部上場企業のモテ課長を演じてもらったのですが、それは本人が、職は違えどモテ男だからです。ところが、いつもの格好である迷彩服ではない、会社員役の背広を着た見慣れぬ友松さんを目の当たりにした時、私はきょとんとしました。頭が禿げているのです。

 

その時、私は気付きました。友松さんの迷彩服は、その上にバンダナ巻いていてもおかしくないための扮装・・・つまり「ハゲ隠し」だったのではないかと。

 

「だから友松さんはいつでも迷彩服を着ているのでは?」と邪推した私ですが、「ハゲ課長が会社中の女子社員からモテるという設定は、リアルなのだろうか」と一瞬迷いました。

しかし友松さんはハゲをさらしたまま堂々とモテ課長を演じ、観客からも、「ああいう禿げてる人がモテるのはリアルじゃない」という感想はまったく出ませんでした。仕事が出来る男は、ついていきたくなる男なのだというオーラが画面からも漂っていました。

 

ひょっとして私は、日本映画として、画期的なことをしたのでは!……と思いました。これが日本のハゲ観を変える第一歩になってほしいと思います(笑)。

 

『青春夜話』大阪と名古屋直結の二週間上映の付き添い(毎日トークショー)を終え、いま私は東京に居りますが、2月3日からはまた二週間、関西に行きます。今度は神戸と京都の一週間ずつの公開です。

 

次回の道場は、神戸のネット喫茶で視聴させて頂くことになると思います。

 

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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