ゴー宣ネット道場

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泉美木蘭
2015.7.28 06:00

いじめられっ子が親に隠す心理


岩手県での中2自殺事件について、「親の責任」か「学校の責任」かの
議論がなされていますが、私は、学校の責任が大きいと感じます。
「生活記録ノート」には絞り出すように「死」を書きながらも、
父親に心配かけないように、一切を黙って優しく振舞っていたのですから、
「父親がチェックを怠った」というよりも、亡くなった亮くんが、
ノートの存在そのものを、父親には徹底して隠していたのだろうと
その心理を想像できます。

父親に衝撃を与えたくない、でも、救いを求めて、自分の状況を担任に
打ち明ける。自分には踏みだす勇気がない、けど、打開したい。
面と向かって長く説明する元気も、いまはもうない状態になっている、
でも、1行、2行、ノートに書くことならできる。

私自身、子供の頃、学校や家庭外で起きた嫌な出来事を、
親には徹底して隠していました。
「なにがあったの?」とたずねられるような事態になった時も、
内容を軽い話に変えて、安心させる方向で済ませて、
実際のところを親に話すことはなかったです。

毎日の宿題だった日記帳の提出にも、
いじめられたことや、嫌な目にあったことは、書かなかったです。
軽いものだったということもありますが、
先生が親に通報して、親に読まれたら困ると思っていたからです。
もし書くような事態になったとすれば、最後の砦だったろうと思います。


親に隠す――そこには子供によっていろんな理由があると思いますが、
私の場合は、長女として、勝手に家族のバランスをとるように振舞って
いたことが大きな理由でした。

私の家庭には決して不具合があったわけではないけれど、
父親は自分の研究に必死にならなければならない時期で、
母親は今はとっても元気な60代になっていますが、当時は
メンタル面が非常に繊細なために尋常ならざる苦労をしていた人で、
子供から見ても、とても動揺しやすい脆さを感じていたので、
自然と、心配事を見せないようにしていました。
たまたま成績がよかったので、可愛がってくれていた祖母から
「成績が良いから、きっと将来の進学先は◎◎だね!」
といったような話をたびたびされていたこともあり、
ますますその“家族が喜ぶライン”に自分を乗せて、
友達が多く、よく本も読み、よく勉強する楽しい娘」を演じては
良い家庭になるよう、バランスをとろうとしていました。
弟も、同じ小学校にいて、かわいかったし。

それがマイナスだったとも、いまは思いません。
私の場合は、運良く、自分の過去を本に書いて出すという機会があり、
たっぷりと親を失望させることができましたので(申し訳ない!)、
いまでは、やたら愉快なお姉さんになりました。

自殺してしまった子と自分を安易に重ねることなどできませんが、
それがどんな家庭であったとしても、程度もさまざまであったとしても、
親も子供自身も知らずのうちに、「家族のバランスをとる存在」として
振舞う役割を背負っていく子供は
決して少なくないでしょう。
私は自分の家庭をうまく運営できていない人間なので、
非常に言いづらいのですが、

家庭に不和があれば、深層心理に「親に見捨てられたくない」という
不安が
こびりついて、ますます頑強に「良い子供」を演じてしまう子も
いるだろうと思います。

そのために、子供が、親の目には届かない、いや、届けない出来事を
抱えることも、ごく普通にあることだと。


そういった、親が介入できない子供の世界のなかで、
担任との通信の場に、あれほどまでに追い詰められた言葉を書き込み、
それを≪スルー≫されたまま死に向かっていったこと。
いじめ=リンチの行われていた事実を事無かれ主義に対応する学校、
いじめを傍観していた生徒たちは、いまどう感じているんだろう。
学校への憤りを感じずにはいられません。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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