ゴー宣ネット道場

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泉美木蘭
2016.3.5 05:02

その2)待機児童問題は「町づくり」の欠陥でもあるのでは?


私はかなりの田舎育ちなので、都会の人とは環境が違うと思うけれど、
子供の頃は、まだ空き地がたくさんあり、わざわざ市営のグラウンドまで
行かなくてもボール遊びができた。
近所の家の庭に入り込んでしまい、怒鳴られることはあったし、
悪ガキが道路の真ん中で拾ったガラスを割って遊んでいるのを見て、
うちの父が叱り飛ばしているのを見たこともあったが、
そういった『しつけるべきこと』でない限りは、近所で遊んでいることを
怒られるということはなかった。
もちろん、煙たがる人はいたのかもしれないが、親が「委縮」するような
出来事はなかったのだと思う。

4つ下の弟の世代になると、任天堂の黄金時代に突入し、
「ファミコン」のある家が増えたが、それでも放課後の時間帯になると、
缶蹴りをしてキャーキャー騒ぐ子供たちの声は当たり前に響いていた。


ところが、この20年ほどで宅地開発が急激に進み、いま地元へ帰ると、
空き地はほとんどない。
用水路は地下におさまり、田んぼは埋められ、単身者用のアパートや
建売住宅がぎっしり並んでいる。
あとは、駐車場。
ちょっとした隙間にある小さな土地でも、車が1台でも停まるとなると、
「コインパーキング」として経営されている。

公園はあるが、ボール遊びは禁止。
路上で子供はぱらぱらとは見かけるが、歩いているだけ。
小学校の校庭か、市営のグラウンド、あるいは自宅にこもってゲーム等、
子供たちは、地域住民の日常からは隔離された場所で遊んでいる。


こうした町づくりの末、普段から子供たちの嬌声を聞くことがなくなり、
『子供は宝』という感覚がなんとなく日常から薄れていったのではないか。
その結果、突然近所に保育園がやってくるとなると、異質なもの、
『基地のようなトンデモナイもの』とまで判断してしまい、
個人の我だけを発露させる人が現れて、

「せっかく終の棲家を購入したのに!」
「必要なのはわかるが、うちのそばに作らなくてもいいじゃない!」

という攻撃的な反対運動につながってしまうのでは?


駐車場が増えた現象も、保育園ができない理由との関わりがある。

補助金を得られる「認可保育所」を作ろうと思うと、
施設や園庭などに「国の基準」とされる広さを確保しなければならず、
土地の値段との採算をとることがかなり難しくなる。
高い家賃をクリアできないとなると、保育士の給料を削るしかない。
フルタイムで神経を使って働いても、月収は約15万円以下、という
ケースが半数以上だ。せっかく資格を持っていても離職してしまい、
保育士として働かない人も増え続けている。
2015年の時点で、資格を保有していながら保育士として働いていない
「潜在保育士」は68万人とされた。

こうなってくると、経営する側もわざわざ保育園を建てて苦労するより
「更地のままにして駐車場経営でもするほうが良い」、と考えるようだ。
都心部でも本当に駐車場が増えた。
大きな建物が取り壊されて、こんなところにずいぶん広い土地があった
んだなあ、静かでいい場所だな…と思って眺めていても、ひと月経てば
アスファルトで均され、コインパーキングになっている。
整備が非常に簡単で、運用しやすいのだ。
都心部では「とりあえず駐車場に」と安易に土地利用転換されるケースが
増えているそうで、供給過剰になっているありさま。

駐車場を保育園にしろ、とか、駐車場のせいで保育園ができない、と
言っているわけではないが、
「利益との天秤にかければ、
『子供の居場所』にお金を使おうと目線を向ける人は、いない」

というのが現実だ。


また、認可保育園だけでなく、認可外保育施設も悲惨な状況だ。

「保育士の給料を支払って、家賃を払って、もうほとんど手元に残らない
のよ…。期待に応えたかったけど、どうしても続けられなかったの」

忘れられない、お世話になった園長先生の言葉だ。

(つづく)
泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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