ゴー宣ネット道場

BLOGブログ
泉美木蘭
2016.3.28 14:17

ぜんぜん阿漕じゃない、阿漕の平治伝説

今日は動画「淑女我報」「古事記ワンダーランド」「伊勢弁講座」の
3本を収録。

伊勢弁講座では、三重県のある駅に設置されている、JRの面白い
看板を紹介したのですが、
その看板のなかにあった『あこぎ(阿漕)』という地名について、
笹さんが「すごい地名ですねえ」と。
地元だし、親戚のおばちゃんが住んでいたし、私自身はまったく
意識していなかったのですが、そう言えばそうだなあ、と。
親戚のおばちゃんは、阿漕な奴め、なんてイジメられたことが
あったりしたのだろうか……? とか。
いや、そんないじめの理由は地元で聞いたことないんだよな。


気になって、帰宅してからその「阿漕」という地名を調べてみると…
あちゃー、地元なのに知らなかった!

笹さん、実は、その“すごい地名”そのものが、
「阿漕」という言葉の発祥の
地でした!


あこぎ【阿漕】(大辞泉)
1  しつこく、ずうずうしいこと。義理人情に欠けあくどいこと。
特に、無慈悲に
金品をむさぼること。「―な商売」「―なまねをする」
2  たび重なること。


《阿漕が浦の“阿漕な”漁師》
阿漕が浦というその三重県津市の海岸は、伊勢神宮に奉納する魚を
獲るための海域で、一般の漁師は立ち入り禁止とされていました。
しかし、ある漁師が阿漕が浦でしか獲れない魚を獲ろうとして入り込み、
味をしめて何度も何度も何度も密猟を繰り返した末、ついに見つかって
捕らえられてしまい、処罰を受けることになったのでした。
この話をきっかけに、ずうずうしく、悪どい人間を「阿漕な奴」と言うように
なったのです。


これが、いまも津市にある阿漕が浦に残る伝説であり、「阿漕」と
いう言葉の発祥だったのでした。

って、私の知ってる話とちがう・・・。

私の知っているその阿漕の漁師の伝説は、もっと悲しい話だった。
そんな、阿漕な奴とはちがった。


《地元民が語る阿漕が浦の伝承》

阿漕の平治という漁師がいた。
平治は、年老いて病に伏せる母親とふたり暮らしだった。
生活は貧しく、平治は弱っていく母親に薬を買うこともできなかった。
ある晩、平治はひとりで暗闇の海へ漕ぎだした。
そこは、阿漕が浦。お伊勢さんに奉納する魚を獲る区域で、平治は足を
踏み入れてはならない禁漁区だったが、この海には、薬効があり母親の
病に効く『ヤガラ』という魚がいたのだ。

「お伊勢さん、すんまへん、死んでいく母親のためなんや
一匹だけでかまへん、ヤガラを釣らせてください」

お伊勢の神様に頭を下げながら、平治は、暗闇のなかでヤガラを釣って
母親に食べさせた。母親は「おいしい、おいしい」と言って少し元気になった。
そこで平治は、母親を回復させるため、毎晩のように阿漕が浦でヤガラを
密猟するようになった。

ところがある晩、異変に気付いた役人が船を出して捜索をはじめた。
平治は、役人の船が灯す提灯のあかりを見て、慌てて船をこぎ出して丘へ
逃げ切ったが、このとき、海のなかへ菅笠を落としてしまった。
この菅笠が決め手となり、翌朝、平治の家に役人がやってきて、平治は
捕まり、当時の決まりで、むしろに包んで縛り上げられて、阿漕が浦に
沈められてしまった。
ひとり取り残されてしまった母親も、再び病が悪化し、ひとりぼっちで死んで
しまったのだった。


なあ? ぜんぜん違うやろお?
阿漕な奴とちゃうやろお?

この伝承のなかにある、海に落とした菅笠をモチーフにした、
『平治煎餅』という銘菓がございまして、私は、きなこ餅や葛餅やイチゴ大福の
ほうが好きだったので、あまり食べませんでしたが、
戸棚やおばあちゃんの部屋の炬燵の上には必ずあったなあ。
この平治煎餅は、昭和天皇が、毎年お買い上げになった皇室御用達でも
あるのでした。


・・・という話を、伊勢弁講座でやればいいんですけどね。
ああ、また地元愛を表現してしまった。
泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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