ゴー宣ネット道場

BLOGブログ
泉美木蘭
2016.10.10 17:00

選民意識を快感にする人々

「どーせどいつもこいつも愚民ばっかりですから」
「ちゃんとわかってる人間なんかほとんどいません」
「みんなどーーーせ時間がたてば忘れますからね」

Youtubeの竹田恒泰チャンネルの動画を見ていた。
竹田氏は、テレビ出演時よりもさらに輪をかけて下品で、
選民意識をもろに露呈した、完全なる上から目線の態度だ。
憚りなく知性のかけらもない暴言の数々を披露している。

竹田チャンネルには10万人近い登録者がいて、
毎日
数分程度のニュース解説+暴言の動画がアップされるのだが、
どの動画も1日やそこらで、1万回以上の再生回数になる。

テレビで見かける有名人だからという理由で登録していたり、
竹田研究会の会員たちがこぞってSNSやブログに貼り付けたり、
もちろん竹田チャンネル自体が、広告収入を得られるネット動画を製作
するという目的をもってやり方を研究していたり、
アクセス数を支える理由はいろいろあるのだろう。

だが、竹田動画にもっとも食いついているのは、
世の中から虐げられている立場の、劣化したネトウヨ的体質の人々では
ないだろうか。
笹さんも以前、竹田動画を見てその嫌悪感を書いていたけれど、
普通の感覚の人間なら、あの人をナメた言動には終始イライラさせられ、
目的がなければたった数分でも最後まで見てはいられない。
動画など星の数ほどあるし、ほかにいくらでも楽しめるものがある。
それでも好んで見ている人は、竹田動画からなんらかの快感を得ている
としか思えない。

自分が、世の中からバカにされている、置いてけぼりにされているという
劣等感があるから、
竹田氏の、世の中をバカにして、ナメくさった下衆な態度、選民意識が
心地よく響き、自己投影することで快感が得られるのでは?

私の体験した範囲では、選民意識を持つ人間は、
選民された者どうしが認め合っているというケースはなく、
自分以外の他人には興味がなく、
完全に見下す対象・利用する対象
としか認識していないというパターンばかりだ。
たまたま自分とそっくりの選民意識を持つ者どうしなら、鏡で自分を見る
ようなうっとり感で、関係が保てるのかもしれないが。

劣等感が募ることは誰にでもあるが、それを受け入れる勇気がなく、
ただただ砂粒化・アトム化してしまった劣化したネット民は、このような
精神状態に嵌りやすいだろう。
吹き溜まりに流されてきた「自分以外はバカ」の意識が、
「自分以外はバカ」と堂々と言っている動画に慰撫される。
こういう人々は、さんざん快感を得た対象であっても、きっかけ次第で
手のひらを返したように嘲笑うのでは?

ところで今回見たのは宮内庁人事について大絶賛する動画だった。
竹田氏は、安倍首相が小泉政権下で官房長官だったころから、
いかに宮内庁人事に業を煮やしていたかを暴露していた。

羽毛田長官のころ、当時は第一次安倍内閣。
安倍首相は、女性宮家を進める羽毛田長官が嫌いで嫌いで、
いつも激怒していた、と。そんな安倍首相に、竹田氏は、
「だったらどうして羽毛田長官を辞めさせないのか」
と聞いたところ、

「辞めさせようと思って四方八方手を尽くしたが辞めさせられなかった」

という答えが返ってきたのだそうだ。
宮内庁長官の人事権は官僚機構にあり、内閣総理大臣にはない。
だから総理が辞めさせようと思ってもできなかった、と。
ところが、今回の人事は「官邸主導」とされている。
竹田氏は、当時を振り返って、

「安定した安倍政権。
本来総理大臣が手を付けられなかった宮内庁人事までも、
安倍さんは手をつけられるようになった。
非常に重大なこと。素晴らしいことです」

などと言ってのけた。
安倍政権が、天皇陛下のお気持ちに対する報復人事を行い、
皇室を官邸の管理下に置けるようにしたことを、大絶賛しているのだ。
竹田氏は、いかに自分が愛国心を持ち、皇室をよく知り尽くしているか
というような物言いをしながら、政治が皇室に近づくことの危険性すら
わかっていない。

この動画は、

「まあ、これ、民主党時代にこんなことがあったら夜も眠れないけど
安倍政権だからいいかなって」

などと言い残すところで終了していた。
耳を疑う。

「譲位は危険が伴う、200年先、300年先まで考えなければならない!」

などと物言いをつけていたくせに、政治権力にはなぜそんなに甘いのか?
いまある政治権力が、天壌無窮だと思っているのか?
自分と考えが同じだからという理由で政権に阿って、
野党なら最悪だけど、安倍首相のやることだからいいや、と大絶賛して
しまう根性。そのいい加減な本音を平然と口にしてしまう浅はかさ。
不誠実もほどほどにしてほしい。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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