ゴー宣ネット道場

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小林よしのり
2018.7.18 11:21日々の出来事

二人の最初の読者

『ゴーマニズム宣言』や『よしりん辻説法』のコンテ
ができたらまず秘書・岸端に見せる。
岸端はもう10年以上、わしの最初の読者である。
彼女はわしの目の前で、笑いながら読むし、読了後の
感想は、まるでもう一人のわしがいるかのように、
わしが狙った通りの箇所を指摘して、具体的に思った
ことを言葉にしてくれる。

何かを感じることと、それを言語化する能力は別だ。
岸端を雇ったのは、『ゴー宣』の一本一本の感想を
次々にメールで送って来て、その感想の言語化が
特別に優れていると思ったからだ。
岸端は言語化能力が優れているから、自分の描いた
ものが、他人に「伝わってるな」と確信させてくれる
のがありがたい。

だが、長年やっていると、ひょっとして岸端にしか
伝わっていないのではないかと疑うことがある。
だから読者からの「面白い」という、たった一言でも、
「岸端以外の人にも伝わっている」という安心を得る
ことができる。
実はそれでも愛読者だけじゃないかと疑うのは、
もうわしの性分だ。
新しい読者を獲得できなければ、絶対に安心など
できない。

軌道に乗った作品の感想は、まず岸端に読ませるのが
いいのだが、フィクションの新作の場合は別だ。
実は『おぼっちゃまくん』は、まず妻に見せている。
妻はコンテを読んでる最中、さっぱり笑わない。
気に入ったら「面白い」と言葉少なく言うだけだ。
もっと褒めて欲しいから、次に岸端に読ませるのだ。
すると岸端は馬鹿笑いしながら電話をかけてくる。

だが、ギャグ漫画や、完全新作漫画の場合は、外して
いる場合がある。
さっぱり「面白くない」場合があるのだ。
そんなとき、妻は冷酷に「面白くない」と言うことが
できる。
なぜ面白くないのか、どうすれば面白くなるのかを
言語化する能力が妻にはない。
だからすごく腹が立つ。
腹が立って、わしが怒り出す場合もある。
それでも冷酷さでは、絶対に人に負けないから、
フィクションの新作は妻の審判を仰ぐことにしている。
ただし、『ゴー宣』を妻に見せても駄目だ。
論理的思考能力がない、つまり馬鹿だから理屈は
分からないのだ。

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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