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高森明勅
2019.1.21 13:03政治

北方領土も「負ければ解決」?

長期政権を保つ安倍首相。

 
彼は得意技を持っている。
 
それは「負ければ解決」方式だ。
 
これまでの政権が“譲れない一線”
として来たところを、
平気で越えて引き下がる。
 
つまり「負ける」。
 
しかし、それによって、
難問を「解決した」かのような錯覚を、
(知識の無い人々に)暫くの間だけ与える効果を持つ。
 
その錯覚により、
目先の支持率を上げたり、
疑惑やスキャンダルを隠したり、
選挙を有利にしたり等々が期待できる。
 
実に見え透いた手口だ。
 
国民を舐め切っているとしか思えない。
 
分かりやすいところでは、
大方の拍手喝采を浴びた「日韓合意」。
 
あれが河野談話も霞む、
取り返しのつかない暴挙だった事は、
当時、指摘した。
 
今や、その事実は誰の目にも明らかだろう。
 
韓国側に日本との約束を守る気はない。
 
ただ安倍首相が、
慰安婦問題について公式に日本側の非を認め、
更に国費で事実上の“償い金”まで支払った事実だけが、残った。
 
その上、日本は国際法上、
既に解決済みの問題でも、
易々(やすやす)と譲歩する事を教えた。
 
安倍氏が、自らの点数稼ぎの為に犯した失策
(という以上に日本への裏切り!)のせいで、
慰安婦問題で日本は韓国にはっきり「敗北」したのだ。
 
それが、「徴用工問題」を
大きく呼び出す結果となった。
 
今、安倍氏が前のめりになっているのは北方領土問題。
 
と言うより、日露平和条約の締結だ。
 
平和条約の早期締結の為に、
政府がこれまで堅持して来た
北方4島の帰属問題の解決を優先させる立場
(これが北方領土問題の最後の一線!)を、
惜しげも無く放棄しようとしている。
 
我が国に平和条約を急ぐ理由はどこにもない。
 
にも拘らず、安倍氏は何故急ぐのか。
 
自分の任期中(!)に
「手柄」を立てようと焦っているようにしか見えない。
 
百戦錬磨のプーチンにとっては、
実に“有難い”交渉相手だろう。
 
北方領土問題については、
次のような指摘に耳を傾けるべきではないか。
 
「北方領土問題は領土『紛争』ではない。
独裁者スターリンによる国家犯罪である。
スターリンの指令を受けたソ連軍が終戦直前、
日ソ中立条約を一方的に破り、
ポツダム宣言受諾後の武装解除した
当時の満州や朝鮮半島、樺太(サハリン)などに侵攻、
火事場泥棒的に一度も他国の領土になったことのない
4島を強奪した戦後最初の国家主権・国益侵犯事件
なのだ。
国家犯罪である以上、4島返還という
原状復帰を真っ向から要求するのが
歴史的正義を貫く筋というものだ。
…バナナの叩き売り的な2島、3島、等分論などは、
正義の主張から自ら降りてしまう文字通りの
論外なのである」(産経新聞論説顧問、齋藤勉氏)
 
安倍氏はこれ以上「売国」行為を
重ねるべきではあるまい。
 
画像:Bangkokhappiness / Shutterstock.com
 
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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