ゴー宣ネット道場

BLOGブログ
高森明勅
2019.1.28 17:27政治

安倍首相はトランプ大統領のクライアント?

『WiLL』3月号に京都大学名誉教授、
中西輝政氏と評論家、江崎道朗氏の対談が載っている。
 
興味深い発言があるので一部を紹介する。
 
中西氏
「なぜ今、
(平和条約締結前に必ず4島の帰属決定を
優先させるという)この原則を放棄し、
(平和条約締結後に面積にして僅か7%の
歯舞・色丹2島だけを引き渡すという)
56年宣言まで逆戻りさせるのか、
まったく理解できません。
今も2島返還だけで手を打とうとする
経産省は一貫して資源外交しか眼中になく、
他方、安倍(晋三)さんは『レガシーづくり』
ですっかり前のめりになっている。
この両者とも『祖先から受け継いだ4島を取り戻す』
という国益的発想を欠いています。
…(首相の)残り任期が少ないから
大幅譲歩せざるを得ない、と言うなら、
初めから取り組まないほうがいいのです」
 
江崎氏
「アメリカの軍関係者は…
『中国とロシアは対外的には
敵対関係を演出しながら、
裏でいくらでも手を結んでいる』と
…ロシアと(日本が)平和条約を結べば、
中露を引き離すことができる―これほど甘い考えはない」
 
中西氏
「トランプにとって、
安倍さんは単なる『クライアント』でしょう。
そもそも、トランプは日本の防衛について何も
考えていない」
 
江崎氏
「商売人ですから、
武器だけ買わせればいいと思っています。
しかも、日本側はトランプのやり方に
唯々諾々とのってしまう。
日本は軍事的自立を目指して、
アメリカにとって頼りになる
同盟国になるべきではありませんか。
トランプ政権の要求にこたえて
高価な装備品を買うだけだと
同盟関係を毀損することになると
危惧する声が、米軍側からも聞こえてきます」
 
中西氏
「どうやら日本政府、特に官邸筋は、
とりわけ経産省的発想が根強いように思います。
日本の安全はトランプ次第、
そして、そのトランプの歓心を買うためには、
兵器をたくさん買えばいいと」
 
「韓国が増長する背景には、
日本の力が非常に低下した事実がある。
…平成30年を通じ日本の地位低下には
劇的なものがあります。
日本は悔しければ、
もっと国力をつけてからにしろ、
というわけです。
確かにその通りです。
それからもう1つ、文政権にとって
北朝鮮が脅威でなくなったことも大きい」
 
江崎氏
「日韓関係が悪くなると、喜ぶのは中露です。
見す見す中露を喜ばせるようなことを、
日本はしてはいけない。
…インテリジェンスの世界では、
相手国の挑発に乗ったら負けという鉄則があります。
文政権は意図的に日韓関係をおかしくさせている。
その挑発的工作に乗ってしまい、
日本が訳の分からない方向に行くことは
決してプラスではありません」
 
「2015年、慰安婦問題について日韓で合意しましたが
…慰安婦問題は、日韓協定で決着済みであり、
もうそれ以上は何もしないと突っぱねればよかった。
それで韓国側が文句を言ってきたら、
国際社会に向けて日本の立場をアピールすればいい。
韓国政府との間で『解決する』という愚かなことを
するべきではなかったのです」
 
中西氏
「北方領土問題も同じです。
…国際社会では前のめりになって、
いついつまでに問題を解決したい、
とする志向を強く持ったら、
持ったほうが負けなのです。
イギリスのEU離脱によって、
再び英領ジブラルタルや北アイルランドの
領土問題が浮上してきています。
ジブラルタルに関して言えば、
スペインはこの三百年間、
ひるむことなく『領土を返せ』と
イギリスに言い続けています。
…今もそれはスペイン国民の悲願ですが、
共にEUにいる間は、確かにその問題は少し
等閑(とうかん)視されていました。
ところが、イギリスが『EU離脱』となったときから、
また浮上してきて、離脱するならジブラルタルを返せと、
今、スペインで猛烈な大テーマになっているのです。
…領土問題は普通、解決に至るまで何百年とかかるもの
です。
…領土問題や歴史問題では解決を急ぐと
必ず大きな譲歩をせまられる」
 
江崎氏
「日本人は問題を抱えると、
過剰にストレスを感じてしまいがちです。
そのストレスを何とか解消しようと、
解決の方向に持っていきたがる。
でも、ストレスに耐えるタフさがなければ、
日本は生き残っていけません」
 
…「解消を急ぐと必ず大きな譲歩をせまられる」
という指摘は、“負ければ解決”方式を続ける
安倍首相には、さぞや耳が痛い指摘だろう。
 
ちなみに中西先生とは以前、
『古事記が日本を強くする』(徳間書店)
という対談本をご一緒に出させて戴いた。
 
又、江崎兄は長年の知友だ。
 
なお同誌巻頭の大阪大学名誉教授、
加地伸行氏の一文の無知、
愚劣ぶりが酷(ひど)すぎる。
 
画像:phol_66 / Shutterstock.com
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

次回の開催予定

第93回

第93回 令和2年 11/8 SUN
14:00

テーマ: 「愛子皇太子の可能性」

INFORMATIONお知らせ