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高森明勅
2019.3.8 07:00皇室

神器は皇位と共にあり

日本人には古くから
「神器(じんぎ)は皇位と共にあり」
「皇位は神器と共にあり」
という考え方がある。
 
勿論、わが国の長い歴史の中で
異例・変則の場面が皆無だったのではない。
 
ごく稀(まれ)ににそういう場面があっても、
基本的に上記の考え方が覆(くつがえ)る
ことなく現代に至っているのが、事実だ。
それを踏まえて、この度の御代(みよ)替わりに
おける神器の継承を、どう理解するか。
混乱があるといけないので、念の為に整理しておく。
 
まず、今上(きんじょう)陛下は
4月30日の午後12時まで皇位にあられる。
だから、神器はその瞬間まで今上陛下のもとにある。
 
改めて言うまでもないが、
神器の中身は以下の通り。
 
(1‐1)伊勢の神宮のご神体(しんたい)の神鏡
(1‐2)そのご分身で宮中の賢所(かしこどころ)のご神体の宝鏡
(2‐1)熱田(あつた)神宮のご神体の神剣
(2‐2)そのご分身で御所(ごしょ)の“剣璽
(けんじ)の間(ま)”に奉安されている宝剣
(3)同じく剣璽の間に奉安されている神璽
以上の3種類、5体だ。
 
皇位の継承に伴う儀式である
「剣璽等承継の儀」(国事行為)では、
(2‐2)と(3)だけが実際にご動座になる。
しかし、だからと言って、それら“だけ”を
継承されるのでは、勿論ない。
 
3月6日の予算委員会での安倍首相の答弁では、
それらだけが受け継がれるかのような印象を与える。
だが、そうではない。
 
剣璽等承継の儀と同じ時刻には(1‐2)を
祀(まつ)る賢所で、皇室行事として
「賢所の儀」が執り行われる。
これらは、上記“全て”の神器を新天皇が
恙(つつが)無く継承された事実を、
改めて「表示」する為に“象徴的”に
行われる儀式だ。
 
従って(1‐1)と(2‐1)も、
当然ながら継承の対象から外れていない。
それらの神器の継承が実際になされるのは、
いつか。
 
皇太子殿下が即位される5月1日午前0時と
“同じ瞬間”だ。
神器は皇位と共にありという、
日本人の伝統的信念に照らせば、
当然そう理解できる。
だが法律上の根拠はあるか。
皇室経済法の規定が根拠になる。
「皇位とともに伝わるべき由緒ある物は、
皇嗣(こうし)が、皇位とともに、これを受ける」
(7条)この条文にある
「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」の
中心的存在は、神器に他ならない。
 
ここに「皇位と“ともに”」とあるのがポイント。
 
「ともに」と規定されている以上、
皇位が新天皇に移りながら、神器だけは
“遅れて”移るような事態は、(外形上はともあれ)
想定できない。
これによって、
皇位を継承された瞬間、神器も受け継がれることになる。
昭和から平成への御代替わりの時も、
昭和天皇が崩御された昭和64年1月7日
午前6時33分に今上陛下が皇位を受け継がれ、
同じ瞬間に神器も継承された。
 
その事実を表示する為に、
3時間余り後の午前10時から、
剣璽等承継承の儀と賢所の儀が行われた。
 
その間に「空位(くうい)」が生じた訳でも、
神器が先帝のもとに“留められた”訳でもない(!)。
 
「事実」と「儀礼」の関係について、
くれぐれも誤解をしてはならない。
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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