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高森明勅
2019.4.15 07:00皇室

あづかれる宝

私の書斎の一角に皇室関係の本棚が並んでいる。
それらの本棚の1つに、天皇・皇后両陛下のこれまでの
「おことば」や御製・御歌などを収めた本ばかりの棚がある。

その棚に御歌集『ともしび』も。
宮内庁東宮(とうぐう)職の編集。
昭和61年12月23日(!)に刊行された。
当時は皇太子・同妃であられた両陛下の御歌集だ。
天皇陛下の御製(ぎょせい)166首(うち6首は琉歌)、
皇后陛下の御歌(みうた)140首を収める。

「ともしび」という題名は、昭和32年の歌会始の御題
「ともしび」によって詠(よ)まれた、次の御製にちなむ。

ともしびの

静かにもゆる
神嘉殿(しんかでん)
琴はじきうたふ
声ひくく響く
静寂かつ幽遠。

神秘な時間の雰囲気が伝わる。
改めて申すまでもなく、皇室祭祀の中でも特に大切な
新嘗祭(にいなめさい)を詠まれた御作。
表紙の色は「皇太子」の御装束の黄丹(おうに)色。
オウダンとも読んで、紅(くれない)を帯びた梔子(くちなし)色だ。
「ともしび」の色も想起させる。

この御歌集に、皇太子殿下がお生まれになった
昭和35年の皇后陛下の御歌として、次の1首が掲げられている。

あづかれる

宝にも似て
あるときは
吾子(わこ)ながらかひな
畏(おそ)れつつ抱く

皇太子殿下は皇后陛下にとって勿論(もちろん)、
我が子(“吾子”)である。
しかし、やがて将来は126代の天皇となられる御方だ。
その事実を思うと、人様から預かった大切な宝物のように思われて、
抱き上げる腕(“かひな”)も畏れ多さに緊張を禁じ得ない。
そんな趣旨の御歌だ。

皇后陛下がどのようなお気持ちで、
皇太子殿下のご養育に当たられたか。
その一端を窺(うかが)う事が出来る。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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