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笹幸恵
2019.5.18 00:09日々の出来事

性暴力は「やったもんがち」なの?

NHK「クローズアップ現代」を観た。
19歳だった娘に対する父親の性暴力に対し、
名古屋地裁岡崎支部が出した無罪判決。
なんでこのケースが「同意はなかった」けど
「抗拒不能だったとはいえない」になるのか、
そしてなんでこれが無罪になるのか、
さっぱりわからなかった。

じゃあ被害者はどれだけ抵抗すれば
いいんですかね?
殴られたり蹴られたり、それでも果敢に
立ち向かう姿勢を見せろ!ってことなの?

いや、むしろ出演者のSpring代表理事の
山本潤さんが指摘していたように、
より考慮すべきは、相手との関係性だろう。
対等な関係であればNOと言えることでも、
上司や先輩や親に、なかなかNOと言えない。
そんなことはままある。
仕事を干されるかもしれない、
厳しい職場環境に追い込まれるかもしれない、
帰る場所を失うかもしれない、
ほかの家族が苦しむかもしれない、
私さえ我慢すれば・・・と。

性暴力だって、そうした上下関係の中で
生まれてくる。
「NOと言えないほうが悪い」のではなく、
立場を利用して何かを強要、強制
するほうが悪いのだ。

もう一人の出演者である弁護士の宮田桂子氏は、
「検察が裁判官に対して“黒”と思わせられなかった
ということ」
と、無罪判決を検察の力量不足にしていたけれど、
そりゃ六法全書的にはそうなんだろうけど、
「相手との関係性」という観点から見れば、
中学生の頃から性的暴行を加えていた父親は、
父親というだけで子を支配できる立場
なのだから、黒も黒、真っ黒だ。

ちなみに今年の3月だけで、性的暴行を
受けたにもかかわらず無罪判決になった
ケースは4件あるという。

今回の番組で取り上げられたケースとほぼ同時期、
静岡地裁が出した無罪判決は、12歳の長女に父親が
2年間にわたって性行為を強要していた。
長女の証言が変わっていったこと、
家族の誰も気づかなかったことから、
被害者の証言に信頼性がないとして無罪。
でも父親の携帯電話には
児童ポルノ動画があったので罰金10万円。

なんだ、このちぐはぐ感。
なんで娘への性行為の強要が無罪!?
証言が変わっていったのだって、長女の心理状態が
不安定だったことも十分考えられるのに。
これじゃあ加害者側はやりたい放題じゃないか。
やったもんがちになっちゃうじゃないか。
裁判官がおかしいの?
今の法律がおかしいの?
抗拒不能状態をより厳格に定めることって
できないの?

少なくとも、被害に遭った女性の心理状態が
十分に考慮されないのはおかしい。
レイプは「魂の殺人」。
性暴力に及んだ時点で殺人罪に問いたいくらいだ。

性犯罪については、どうしても
「疑わしきは被告人の利益に」なんて
生ぬるい!!!と思ってしまう自分がいる。
笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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