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高森明勅
2019.6.17 06:00皇室

「双系(双方)制」を巡る研究状況

以前、「双系(双方)」という概念自体を知らないで、
皇統問題について声高に発言している人物がいて、少し驚いた。

皇統問題を巡る議論にこの概念を持ち込んだのは、恐らく私が初めてだろう。
しかし、学界ではかねてよく知られた概念だ。
「双系(双方)制」を巡る研究状況については、以下のような整理がある。

「古代史学界では、すでに…高森氏の問題提起の数年前から、
成清和弘氏や春名宏昭氏などにより、
『養老令』「継嗣令(けいしりょう)」
皇兄弟子条の『女帝子亦同(女帝の子も亦〔また〕同じ)』


といふ記述に依拠して、律令制下の日本では、当時のシナと異なり、

『女帝は男帝となんら変わるところのないものとして日本律令に規定されていた』

『日本の律令制では「女帝」は制度的に位置づけられ、予定されていた』として、
女帝の所生子が『親王』(皇位継承候補者)とされる(『女系』継承の容認)と見なし、
『双方制』といふ親族組織に大きく規定されるものであつたといふ見解が複数の研究者
によつて
支持されてきてをり、これが徐々に共通見解となりつつある。

この前提には、文化人類学の家族・親族論を援用しつつ、
古代日本の双系的(双方的)親族
組織論を唱えた吉田孝氏をはじめ、
明石一紀・義江明子氏などの研究により、『双方制』は
現段階で通説的な
位置を占めるに至つてゐたことが背景にある」

(神社本庁教学研究所『皇室法に関する研究資料』所載、藤田大誠氏論文)。

なお「(双)系」と「((双)方」の違いは次のように説明されている。

「『系』(lineal)は祖先を基点とする関係(ancestor-oriented)であり、
『方』(lateral)は自己を基点とする関係(ego-oriented)である」
(吉田孝氏『歴史のなかの天皇』)。

念のため。


【高森明勅 公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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