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高森明勅
2019.7.21 06:00政治

自衛隊「明記」改憲で何が変わる?

今回の参院選の結果が憲法改正にプラスになるのか、どうか。
改めて言う迄もなく、憲法改正の焦点は、憲法9条2項の
「戦力」不保持規定を見直す事。
それを放置して「自衛隊」を明記すれば、
自衛隊は「戦力」未満の非「軍隊」のまま固定化してしまう。
ところが、自衛隊“明記”改憲に「大きな意義と効果がある」との
意見がある(百地章氏「改憲勢力を結集し今秋に備えよ」
産経新聞7月18日付)。

具体的には4点を指摘されている。
その1。「自衛隊違憲論の解消」。
その2。「(自衛隊の)法的安定性を高める」。
その3。「国民の防衛意識が高まる」。
その4。「近隣諸国に警告を発し、それが対外的抑止力につながる」。
いずれも首をかしげる。

まず1。
「憲法に自衛隊が明記されれば、違憲論の余地はなくなる」と言うが、
果たしてそうか。
自衛隊の装備や規模などによって、9条2項で禁止されている
「戦力」に該当すると判断されたら、直ちに違憲論が噴出する
だろう。
憲法に根拠を持つ内閣(5章)であっても、
例えば「臨時会の召集」(53条)に応じなければ、
その対応の違憲性が問題視される事になる。
当たり前の話だ。
そうでなければ立憲主義が無意味になる。

次に2。
「法律にしか根拠を持たない自衛隊」が、
あたかも「法的安定性」を欠いているかのような
言い方をされている。
しかし、政府を構成する中央省庁で憲法に
明記されているものは皆無。
全て「設置法」という「法律にしか根拠を持たない」。
ならば、それらも「法的安定性」を欠いているのだろうか。
誰もそんな事は考えていないはずだ。

更に3。
「国民投票を通じて、全ての国民が防衛問題と
真剣に向き合うことで、『他国任せ』の無責任な
風潮は改まり…」と言うが、自衛隊を「戦力」未満に
押しとどめる限り、(風潮ではなく)事実として「他国任せ」
は改まらない。
それで「防衛意識が高まる」道理はあるまい。

最後の4。
「『自衛隊の保持』を明記することは『自分の国は自分で守る』
との日本国民の決意の表明」と言うが、むしろ逆だろう。
9条2項に手を着けない限り、日本国民はいつまでも
「戦力」を持たず、他国に依存=従属し続ける、
という意思の「表明」でしかない。
そもそも、憲法改正はそうした他国への依存=従属を
“断ち切る為”だったのではないか。

自主独立に向けた改憲か、
依存=従属をいつまでも維持する(名ばかりの)改憲か。
それを見極める必要がある。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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