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高森明勅
2019.10.12 06:00皇室

明治天皇と国民体育大会

昭和の「二大行幸(ぎょうこう)」の1つ、「国民体育大会」。
国内最大のスポーツの祭典だ。
こちらは「全国植樹祭」とは違い、昭和天皇のご意志が
きっかけになったのではない。
それどころか、その前身は大正時代に遡る。

大正13年に内務省の主催によって第1回「明治神宮競技大会」が開催された。
その目的は「明治天皇の聖徳を景仰(けいこう)し、国民の身体鍛錬、
精神の作興(さっこう)に資す」というもの。
主会場は明治神宮外苑競技場だった。

同競技場は戦後の国立競技場の前身で、近代日本で最初の
大型スタジアムだった。
周知の通り、現在は新国立競技場への全面建て替え工事中。
同大会は第3回以降は明治神宮体育会の主催に移ったものの、
昭和14年の第10回から再び厚生省主催となり、名称も
「明治神宮国民体育大会」となった。

大東亜戦争開戦翌年の同17年には「明治神宮国民錬成大会」
となったが、戦時色が濃くなった翌年を最後に中断していた。
戦後は、占領下の同21年に第1回「国民体育大会」が開催された
(兵庫・西宮球場)。

天皇のお出ましは第2回(石川・金沢市営競技場)から。
第3回(福岡・平和台球場)から、冬季大会と本大会の通算で
男女総合成績第1位の都道府県に授けられる「天皇杯」と、
女子総合成績第1位の都道府県に授けられる「皇后杯」が創設された
(但し同国体には天皇のお出まし無し)。

第5回(愛知・瑞穂グランド)から新たに「おことば」を
賜る例となった。
明治神宮のご創建が大正9年で、その外苑競技場の完成は同13年。
だから、同競技場の完成と共に国民体育大会の前身となった
大会がスタートした事になる。
同外苑の造営は元々、国民に広く開かれた場を目指していたので、
まさに相応しい行事だったと言えるだろう。
明治神宮外苑には今も多くの人々が訪れている。

…だが現在、東京メトロ銀座線の「外苑前駅」という駅名が、
明治神宮“外苑”つまり明治神宮にちなんでいる事実を
自覚している人は、案外、少ないのではないか。
それどころか、明治神宮のご祭神(さいじん)が明治天皇と
その皇后だった昭憲皇太后である事すら、知らない場合がある。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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