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笹幸恵
2019.11.13 13:46ゴー宣道場

先例原理主義者の詭弁

『週刊SPA!』11/19号に倉山満氏が
皇位継承問題について書いている。
この人は男系論者にも女系論者にも批判的。
女系論者に対しては、
「皇位の安定的継承、これこそが、
女系論者が流した詭弁の根本」
だと言い、男系論者に対しては
「何か一つ覚えのように『伝統だ』しか
言わない」とこき下ろす。

男系論者に対する認識には同感。
また彼は女系論者の主張を理解している。
民間人として過ごしてきた人を皇族にするなど、
国民が納得しないであろうこと、
側室制度の復活など今さら不可能であり、
したがってそれを前提にした男系継承も不可能
だということ……云々。
なのにこれを「感嘆したくなるほど、
見事なまでの詭弁である」と言っているのだ。

なぜ詭弁か。
古代からの例をこれでもかというくらい
ふんだんに盛り込んでいるのだけれど、
要するに女性宮家や女系天皇を認めたぐらいで
皇位の安定的継承はできないと言っている。

「本気で『皇位の安定継承』を言うなら、
『絶対に子供が生まれる医学』が誕生しなければ
不可能だ」

そりゃそうだ。だけど、少なくとも
側室不在・男系男子に限定したままでいるより、
女性宮家や女系天皇に道を拓いたほうが
より安定的(少なくとも今よりは)になるわけで、
「これで皇位継承が未来永劫、絶対に安定する!」
などと誰も言っていない。
さもそう言っているかのように捉え、
これを詭弁だとして批判するのは
言いがかりである。

では倉山氏自身はどうすればいいと考えるのか。
悠仁さまの時代までは皇位継承が可能であるとして、
旧宮家を復活させる案だ(これまた先例をひきつつ)。
ただし本人には皇位継承権を認めず、その宮家に
生まれた子供に、「生まれた時から皇族」として
生きていただく、という。

これなら段階的で国民も受け入れやすいと
考えてのことなのだろうが、
そもそも旧宮家でその意志のある方はいるのだろうか。
すでに一民間人として暮らす人々の生活や主体性を
この人はどう考えているのだろう。
また、たとえ過去に先例として傍系継承があったとしても、
それが現在の国民の感覚になじむだろうか。

何より、悠仁さままで皇位継承が可能である、
としている点が問題である。
秋篠宮さまは皇嗣殿下であり、皇太弟ではない。
皇位継承第一位ではあるけれど、
「皇嗣」はその順位を示したにすぎず、
皇太弟として祭祀を受け継いでいかれる
わけではない。
悠仁さままで皇位継承が可能だと
果たして単純に考えていいのか?
血さえつながっていればいいってことか?
もっと問題は深刻なのである。

さらに言えば、この人は悠仁さまお一人に
なったとき、そこに嫁ごうとする女性が
いるかという疑問は念頭にないようだ。
男系で継承しようとする限り、女性には
「男を生まなければ」という圧力がかかる。
自分の意志ではどうにもならないにもかかわらず、だ。
その圧力を、女はずっと受け続けなければならないのか?
時代遅れも甚だしい。

そして私が一番違和感を覚えるのは、
すでに女性皇族がいらっしゃるのに、
彼女たちを完全に「蚊帳の外」の存在として
捉えていることだ。
どうしてそこまで女を無視できるのだろう。
男系論者が女性差別だと言われていることを
倉山氏は百も承知でいるというのに、
自らもその陥穽にはまっている。

いやいや、私は女性差別で言っているのではない、
過去の先例からすべてを導き出しているのだ、
と言うかもしれない。
だとするなら、彼は先例原理主義者だ。
過去の先例だけですべてを決めるのが
正当であり、かつ伝統だと勘違いしている。
これこそ詭弁だろう。


さて、次回のゴー宣道場は初の名古屋開催、
「正念場を迎える皇位の安定継承」と題して
開催される。
先例主義や、現実離れした理屈をこねくりまわす
男系論者は置いておいて、
真の問題意識を共有し、打開策を皆で一緒に考えよう!!

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笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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