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高森明勅
2019.12.3 06:00皇統問題

「女系」定義の問題点

「女系」という概念は既に自明な事柄のように思い込んでいる向きがある。
その結果、「国民の理解を深めるための啓発も今後の課題となる」
(産経新聞12月1日付)

といった、完全に“上から目線”の記事を平気で書いてしまうことになる。
女系について、法的な立場からは次のように説明される。

「(家系において)厳密には、女子だけを通じた血族関係をいうが、
広く、中間に一人でも女子の入った、男系でない血族関係を指して
用いられることもある」(『有斐閣法律用語事典[第2版]』)。

この定義では、「厳密には」女性天皇のお子様が男子の場合、
その次の世代の天皇は「女系」ではなくなる。
一方、「用いられること“も”ある」という広義の定義では、「男系」の
概念規定と明らかに“不均衡”になっている。
と言うのは、男系は以下のように説明されるからだ。

「家系において、男子のみを通してみる血縁の系統的関係。
すなわち、血縁の間に女子が入らない者相互の関係」(同書)
これは言うまでもなく、女系の「厳密」な定義に対応している。
ところが、小泉政権時代の「皇室典範に関する有識者会議」の報告書などは、
もっぱら広義の意味で女系の語を用いていた。
メディアも概ねこれに依拠しているようだ。

だが、そうした用法に対しては、以前から専門的見地による批判が
示されている。

「“広義の女系”概念は、文化人類学のuterine(女系)ではなく、
non-unilineal(非単系)に相当する」(吉田孝氏)と。

「女系」概念は厳密な定義の下に遣うべきだ。

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https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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