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泉美木蘭
2019.12.24 13:24

「反アベ」でない、ブラックボックスの理解

今売りの『SPA!』冒頭のコラムで伊藤詩織さんの判決が
取り上げられている。
「レイプ被害を訴える女性は品行方正であれという虚妄」
というのはまったくもっともな意見だ。

一般に言う「イノセント」というキャラクターではない、
たとえ男性にサービスする分野で生きる女性であっても、
同意のない性行為など許されていいわけがない。

伊藤詩織さんは、記者会見でまず服装を非難され、その後も
「あなたが着ていたものが悪かったから、挑発的だったから」
などと言われ続けた。下着について目を光らせる異様としか
言えない言説も登場した。
女性はブルカをかぶれとでも言い出す気か?

そして、被害を告発する女性を支援するのは良いことだけど、
その条件として、被害者に“聖性”を求めたがる潔癖さもまた、
柔軟性のなさの裏返し、現実との乖離があるようでおかしい。

ただ「政権と検察に不健全な関係があるなら徹底的に追及して
ほしいが、政権とその支持者の性暴力は関係がない」というのは、
もちろん言葉の上ではそうだし、『反アベ』という一点のみで
事件を論じようとする一部の人々もいるのだけど、今回は、

《権力を牛耳る者が、お仲間を守るために、性犯罪を握り潰し、
被害を受けた一人の女性を普通に生きていかれない立場へと
追い込んだのではないか?》

という大きな疑惑がある。

●準強姦事件は、所轄の警察署長が扱うのが通例である。

●刑事事件として扱われ、所轄の高輪署の刑事の捜査の末、
山口氏への逮捕状が出されたが、逮捕直前に警視庁刑事部長
である警察トップからの命令で、逮捕が中止された。

●超膨大な事件が存在するなか、なぜ警察トップの人間が、
わざわざ『山口逮捕』の案件に口を出したのか?

●逮捕中止後、それまでの所轄の捜査員は担当を外され、
警視庁捜査一課が出て来て事件を取り上げた。

●伊藤さんは、警察から示談のための弁護士を斡旋され、
捜査員数名に囲まれた上で警察車両で弁護士事務所まで連れて
行かれるという体験をした。

●逮捕中止は「私が決裁した」と警視庁刑事部長・中村格(当時)
が証言している。中村は、菅義偉官房長官の秘書官をつとめた
経歴があり、官邸に重用されている人物である。

●書類送検後、起訴になるか不起訴なのかまだわからない期間に、
山口氏は安倍首相を讃える『総理』(幻冬舎・2016年)を執筆、
参院選1カ月前に出版。自民党が大勝した12日後に不起訴処分が
決定した。

●『総理』で山口氏は、安倍晋三が小泉内閣の官房副長官だった
時代(2000年)からの番記者であることを明かし、
「出会った当初からウマが合った」
「時には政策を議論し、時には政局を語り合い、時には山に登っ
たりゴルフに興じたりした」
など、本当に親密な仲であることを語り尽くしている。

●山口氏は、週刊新潮からの質問状を「北村」という人物に転送
しており、そのメールには、
《北村さま、週刊新潮より質問状が来ました。伊藤の件です》
と添えられていた。
官邸と山口氏の関係に詳しい記者たちによれば、内閣情報調査室の
トップである「北村滋・内閣情報官」以外にいないとの証言。
北村滋は山口氏の著書『総理』にも登場する人物である。

『反アベ』の金切り声を上げることだけに吸い込まれていくと、
このあたりにグリグリ食い込んでいけないし、
そのためにまだまだこの事件の“本当のブラックボックス”が、

知られていないのかもしれない。
事件は終わっていない。今後も追及を続けなければいけない。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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