ゴー宣DOJO

BLOGブログ
笹幸恵
2020.2.26 21:03皇統問題

「皇統を守る会」の女性たち

産経新聞の報道から。
女性有識者たちが「皇統(父系男系)を守る国民連合の会」を
昨年10月に発足させ、昨日、創設趣旨発表会見を開いたという。
会長は、葛城奈海さん。
以前、産経新聞で彼女が皇統問題について
書いたコラムを、私はブログで批判した。

「男系主義者の完全コピペ」

ブログのタイトルの通り、彼女がコラムで
主張していたことは男系原理主義者の完全コピペで、
「女系天皇になればまったく異なる皇統になる」、
それは「万世一系の歴史の断絶を招く重大事」、
「困ったときは先人に学べ」というわけで、
要するに旧宮家の男系男子を皇統に復帰させよ
という主張である。

この女性有識者とやらのメンバーの中には、
個人的な知り合いもいる。
けれど、はっきり言ってしまえば
産経読者という、せっま~い「世間」の中で、
保守を自認する男性たちに担ぎ上げられている
だけのように見える。
そこに本当の自己はあるか?

男系男子で継承しようとするならば、
側室がいないと早晩途絶える。
彼女たちは側室を認めるのだろうか。
今の世の中、側室でいいわ、と思う女性が
果たしてどれほどいるか。
自分に照らし合わせて考えてみればいい。
時代遅れも甚だしい。
現実味がないことぐらい、なぜ気づかないのか。
そこんところ、ちゃんと考えた?

会見では「(男系の)皇統が断絶すれば日本が日本でなくなる」
と述べている。女じゃダメだと、女が言っている。
なんで彼女たちがそう思えるのかが本当に不思議だ。
自分の血は男性よりも劣っていると考えているのだろうか。
男系の血統を尊ぶのは、どう理屈をこねくり回しても
Y染色体を信奉しているからという結論に行き着く。
彼女たちは、Y染色体を有難がっているのだろうか。
そこんところ、ちゃんと考えた?

歴史が~、とか、伝統が~、などときっと言うだろう。
しかし、その伝統はいつからの伝統?
男系男子でなきゃ絶対ダメなどと言いだしたのは、
つい最近の話ですよ?
むしろ昔は、皇統を守るために、双系で
うまくやってきた経緯がある。
それこそ先人たちの知恵ではないか。
側室不在で男系男子に固執していたら、
「天皇制」という日本の国のかたちすら
消滅してしまう。
木を見て森を見ず、とはまさにこのこと。
そこんところも、ちゃんと考えた?

しかも旧宮家の復帰云々を言い出した時点で、
君臣の別という、今もなお守られている皇室の
聖域性をないがしろにしていると言っていい。
そこには考えが至らないのだろうか。
こういうところも、ちゃんと考えてほしいんだけど。

彼女たちは、女系天皇になったら
尊崇の念は持ちませんよ、と言っているに等しい。
要するに男だからいい、というわけだ。
天皇の日々のなさりよう、国民に寄り添う姿を
有り難いと思っているのではない。
歴史だの伝統だのと言ったって、
男だから有り難いと思っている。
あなたがたの天皇陛下への敬意って、
性別で分かれる程度のものなの?

結局のところ、女が女を貶めるという、わかりやすい構図。
名誉男性である。
そして、ノイジー・マイノリティである。

狭い世間から出なさい。
見たくないものでも、大局から見なさい。
観念ではなく、誰かのコピーでもなく、
自分の頭で考えてみなさい。
目の前の無責任な自称保守オヤジの
喝采に惑わされるな。

都合のいい女、にはなるな。
笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

次回の開催予定

第116回

第116回 令和6年 4/20 SAT
14:00~17:00

テーマ: ゴー宣DOJO in名古屋「人権カルトと日本人論」

INFORMATIONお知らせ