ゴー宣ネット道場

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倉持麟太郎
2020.3.5 10:20

緊急事態宣言に関する法整備に関する与野党の愚

数日前に、安倍首相は、今回のコロナへの法整備に関して「新型インフルエンザ等対策特別措置法と同等の措置を講ずることが可能となる立法措置を早急に進める」と話した。

新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下「新型インフル特措法」という)は、民主党政権時代に成立させたもので、はっきりいって、立憲主義とか民主主義とか、そういう原理的価値からみればザル法。

どんなことができるかというと、

・32条:政府対策本部長(=首相)は新型インフルエンザ等緊急事態宣言ができる。宣言をすると、以下のような措置が取れるようになる。
・45条1項:国民にみだりに外出しないよう要請できる
・45条2項:学校等に使用制限や停止を要請できるし、従わないときは指示もできる
・49条:臨時の医療施設のために土地建物物資を使用できちゃう
・55条:物資の売り渡し要請、収容、保管指示
・58条:支払い猶予などの政令を作れる。国会休会中で、参議院の緊急集会もできない時のみ。
・62条:損失補償する。ただし、29,49,55条の場合のみで、外出やイベント自粛では補償しない。
・罰則は、55条の保管命令違反や49条の土地使用の前提としての立ち入り調査拒否などだけで、外出・イベント自粛要請に違反しても罰則はない。(内山宙弁護士の投稿から一部引用)

 

そして、緊急事態宣言の上限は2年で、これを1年延長できます。この、緊急事態宣言自体や、期間、延長等について、国会の事前事後の承認はいりません。報告だけでできます。

もう一回書きます、多くの私権制限が可能になる緊急事態宣言について、国会の事前事後の承認は必要ありません。

おいおい、少なくとも事後承認はいるだろ。延長のときは事前承認いるだろ。世界的に見ても、緊急事態宣言自体はまさに「緊急」だから事前承認はむずかしくても、国会による事後承認や、更新のときの承認が求められているのがスタンダード。そりゃそうです、立憲主義や民主主義からすれば、私たちの権利制限について、代表者による最低限の民主的正当化が求められるからです。

あと、その私権制限がもし必要最小限でなかった場合などに、裁判所で争ったとしても、すべては「行政裁量」の範囲内として合法化される可能性が高い。このあたりも、裁判で事後的に争う基準が提供されておりません。

そ れ な の に

旧民主党政権でつくったから、民主党系の人々は今回のコロナに新型インフル特措法をベースの議論に歯向かえない!!乗っかろうとしている!!

当時の立法者が振り返って「ここはこうしておけばよかった!」というのが一番わかるはずなのに、自分たちが作ったものだから否定できないのか、むしろよくできたものだと思いたいのか、これに対する批判的改定への議論が野党執行部からまっったく出てこない!条文案も出てこない!!

安倍首相との党首会談で話したり釘刺したことで「事実上」言質をとったみたいな姿勢だとしたら、本当に愚かだし、もはや「立法者」の看板おろしてもらえませんか?

 

条文案なんかすぐできますよ、何なら作りますよ。これは作れないんじゃなくて、作らないってことです。

安倍政権の初動が失敗だったのは明らかです。しかし、これに対して批判してるだけでなく、今こそ現実に対応してバッタバタの目の前しか見えなくなってる政権サイドでない方から斜め上の提案できるときじゃないんですか。

結局、与野党ともに選挙や政党内権力闘争という党内外の政局にかまけまくった結果、本当に国家的な課題や緊急対応しなければならない問題が発生したときの危機管理がまったくできなくなってるじゃないか!!!

いつもいつも政局を追っかけて、結果的にはどこでシャンシャンやバーターの妥協ができるかばかり考え、ギリギリの政策論争や価値判断に迫られながら本気の政治をやってないから、与野党ともに、問題解決能力が錆びついて、こういうときに、「フツーの」問題解決のための迅速かつ合理的・技術的な話し合いができなくなってる。

ある問題にたいする問題解決の道筋としては、論理的に「まずこうあるべき」というMaxの提案(オプション)がいくつか考えられるはず(だし、たぶんそんなに選択肢はない)で、その中から、時間的、財政的、人的等々のあらゆる意味での資源の限界とコスト計算による妥協や現実的妥当性の判断がされて(このあたりでやっとそれぞれのプレイヤーの立場によるどうしても譲れない利害関係からくる制約とかが多少加味される)、結果的に数個のとりうる選択肢に収れんされていくはずだ。

「政治は現実をみなければならない」とかいう、自分たちの幼稚な内向きな日々の意思決定を自己弁護するためだけの”業界用語”にはもううんざりだ。そうやって「政治には政治の論理」という自己保身の理屈で自陣を死守する一線を引くことで、何を守ろうとしているの??

そう、極めて高度な公共性を纏った「国会議員」という立場からしたら耳クソのような、自分の立場や政党の党勢とかいう私利私欲ですよ、守ろうとしているのは。

 

本当に、選挙と政党によって、この国は滅びます。あの人たちには任せてられない。みなさん、この新型インフル特措法に対する与野党の動きは、注視、監視しなければなりませんよ!

倉持麟太郎

慶応義塾⼤学法学部卒業、 中央⼤学法科⼤学院修了 2012年弁護⼠登録 (第⼆東京弁護⼠会)
日本弁護士連合会憲法問題対策本部幹事。東京MX「モーニングクロ ス」レギュラーコメンテーター、。2015年衆議院平和安全法制特別委員会公聴会で参考⼈として意⾒陳述、同年World forum for Democracy (欧州評議会主催)にてSpeakerとして参加。2017年度アメリカ国務省International Visitor Leadership Program(IVLP)招聘、朝日新聞言論サイトWEBRONZAレギュラー執筆等、幅広く活動中。

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