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高森明勅
2020.3.19 06:00政治

緊急勅令と議会承諾

帝国憲法には勿論、「非常事態条項」があった。
8・14・31・70条がそれだ。
例えば、「緊急勅令」について定めた8条には次のようにあった。
「天皇は、公共の安全を保持し、又は其(そ)の災厄を避くる為、
緊急の必要に由(よ)り、帝国議会閉会の場合に於(おい)て、
法律に代(かわ)るべき勅令を発す。

此(この)の勅令は、次の会期に於て帝国議会に提出すべし。
若(もし)議会に於て承諾せられざるときは、政府は将来に
向(むけ)て其の効力を失うことを公布すべし」
(原文はカタカナ。句読点も追加した)
条文上、主語は「天皇」で、呼称も「勅令」ながら、

その実態は現在の“政令”に近いと考えてよいだろう。
議会が普通に「勅令」を否決できるルールになっていたのも、
見落とせない。通常は、実質的に議会の議決で成立した法律
(憲法の条文では議会の「協賛」)よりも“下位”にあるべき勅令に、
帝国議会閉会中に緊急事態が起こった場合に限り、
法律と同等の効力を持たせることが、非常手段として

“例外的”に認められた。しかし、緊急勅令は直近の議会で審議され、もし「承諾」
されなければ直ちに効力を失うとされていた。
実例としては、関東大震災(大正12年)や金融恐慌(昭和2年)
の際に発された。

もとより、選挙制度や議会の構成その他の限界はあったが、
少なくとも、事後であっても議会の承諾を“不可欠”としている
点では、国会の関与を全く排除した今般のコロナ特措法と比べて、
制度の枠組みとして遥かに健全なルールになっていたと言える
のではないか。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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