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笹幸恵
2020.4.27 11:53日々の出来事

強権統治を加速させているのは誰か

先日、読売新聞の社説にこんな見出しがあった。
「強権統治の加速」
「『感染症』で正当化はできぬ」
おおお、こういう視点で社説を書いてくれる人が
いたのかと読んでみたら、日本の話ではなく、
世界各国の強権統治の話だった。
いわく、
・香港では感染拡大を受けて5人以上の集まりを禁止。
そのさなかに、中国に批判的な民主派メンバー15人を逮捕。
(しかし昨年のような反政府デモを行えない)
・カンボジアでは、非常事態を宣言すると
移動や集会の禁止、メディア規制強化が可能になる
法案が可決(感染症以外の事態にも適用可)
・ハンガリーでは、非常事態宣言がすでに出されていて、
首相の権限拡大を無制限に引き延ばす法案が可決。
超法規的な措置を恒久的にとることができてしまう。

で、結局、日本はどうかという話にはならずに
「国際社会が強権的な政権に目を光らせることが大事」と
締めくくっている。
まるで対岸の火事みたいだな。
せめて他山の石とせよ、と書いてほしかった。

日本の場合、緊急事態宣言は強制でなく「要請」だが、
その締め付けは益々厳しくなっている。
要請に従わない店は公表するだなんて、
ほとんど要請という名の強制ではないか。
いや、正義と空気を盾にした公開処刑だ。
私はパチンコをやらないからその快楽や依存症については
よくわからないけど、はからずもパチンコ店に行列を作る人々は
権力への反骨精神を発揮していると思う。

この「要請」、東京都はとりわけ細かい。
スーパーに行く回数や時間帯まで「要請」され、
防災無線からは「〇〇区からお知らせです」と
1日に数回、外出自粛が呼び掛けられる。
ほんっとーにうるさい。小姑か。
また、集まった報道陣に対し、小池都知事は「密です!」と指摘。
それをヒントにした「密ですゲーム」がいまネットで大人気だ。
小池都知事が空を飛んで都内を監視し、
集団がいれば「密です!」と言って解散させる。
強権統治の加速を見事に表したゲームだ(制作者本人にその意図が
あるのかどうかわからないけど)。

今日のテレ朝「モーニングショー」では、
都内にある駒沢公園の様子が映し出されていた。
なになに、いつの間に公園もダメになったわけ?
「散歩なら可」と言っていたのは何だったのか。
河川敷でのキャンプの様子も報道されていたけど、
密じゃないからいいんじゃないの?
「キャンプに来る人はこの近所で買い物するから不安、
来てほしくない」という地元の人のコメントが報じられていて、
もはや気分転換に自然を満喫することすら「悪」になっている。
しかもテレビ「サザエさん」では、GWにどこかに出かけようと
話をする磯野家に対して、これが不謹慎だと炎上。
表現の自由、思想信条の自由はどこいった。
日本で「強権統治を加速」させているのはいったい誰か?

互助の精神の謳って組織された戦時中の「隣組」は、
実態は互いの監視であり、総動員体制を強化した。
いまはそこにメディアやネット住人も加わり、
「非国民」を目を皿のようにして探している。
笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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