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高森明勅
2020.5.29 06:00その他ニュース

「和を以て貴しとなす」の真意

「憲法十七条」の冒頭は極めて有名。
だが、一般に誤解されているのではあるまいか。
日本古典文学大系本によって第1条の全文を紹介する
(但し林勉氏の指摘により一部の訓み方を改めた)。

「和(やわら)ぐを以(もち)て貴(とうと)しとし、忤(さか)
ふること無きを宗(むね)とせよ。
人(ひと)皆党(たむら)有(あ)り。
亦(また)達(さと)る者少なし。
是(ここ)を以て、或いは君父(きみかぞ)に順(したが)はず。
乍(また)隣里(となりさと)に違(たが)ふ。
上(かみ)和ぎ下(しも)睦(むつ)びて、事(こと)を
論(あげつら)ふに諧(かな)ふときは、事理(こと)
自(おの)づからに通(かよ)ふ。
何事(なにごと)か成らざらむ」一読、明瞭なように、これは、とにかく「和」を
尊び仲良くしましょう、という教えではない。
むしろ、「事を論ふ」=“議論”の勧めだ。

現代語訳ではおよそ以下の通り。

「打ち解けてなごやかであることを尊び、
やたらと逆らい背(そむ)くことが無いようにせよ。
人はみな徒党を組みがちだが、一人一人を見ると
賢者は少ない。

それゆえ、(仲間の数を頼んで)あるいは恩義ある者に従わず、
あるいは近隣の人とも言い争うことが多い。
しかし、立場の違いを超えて互いに心から和(なご)み睦み合い、
(そのなごやかな気持ちで)事を論じて合意に至れば、
物事の道理は自然に通じる。
何事でも、きちんと道理に立脚して取り組めば、
成就しないものはない」

“公共”の利益を図る為には何が必要か。
人々が広く知恵を出し合って、道理にかなった最善の対処を
するべきだ。

その為には、仲間意識や特定集団(お友達?)の利益に偏った
態度を排除し、互いに偏見や先入観なく、虚心坦懐に、
なごやかな気持ちで議論をしなければならない。

冒頭に「和ぐを以て貴しとし…」とあるのは、
物事を首尾よく成就させる為に、柔軟かつ公正に討議をする
場合の“心構え”について、訓戒したものだった。

憲法十七条が「公(おおやけ)」という理念を
高く掲げるに当たり、(当時、国境を越えた普遍的な価値と
見られていた仏教の尊重〔第2条〕や、国内の秩序維持の為に
最も重要とされる承詔必謹〔しょうしょうひっきん〕
=君主の公式な命令には必ず従うべきこと〔第3条〕を
差し置いて!)

このことを“真っ先”に取り上げているのは、
甚(はなは)だ示唆に富む。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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