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高森明勅
2020.6.19 06:00皇統問題

首を傾げる発言

女性議員飛躍の会編『皇位継承 論点整理と提言』に
収められた発言には、首を傾(かし)げる内容も目立つ。
例えば次のような発言。

「だいたい自分で女性帝王の夫になりたいと思うのは、
あまり普通でない野心家が多いのです。
女性宮家などとという提案がされていると、
内親王と結婚すると自分が殿下になるかもしれないのですから、
普通の神経の人はパスするでしょう」
(八幡和郎氏)これまで、上皇后陛下をはじめ、民間の女性が親王など
男性皇族と結婚されて、「殿下になる」というケースは
多くあった(「殿下」から更に「陛下」になられる場合も)。

「普通の神経の人はパスする」ということは、

それらの方々は「普通の神経の人」ではなかったと言いたいのか。
それとも、“親王”(や王)と結婚して「殿下」になられたのは
立派な方々なのに、“内親王”(や女王)と結婚して「殿下」
になられる方々“だけ”は「普通の神経の人」じゃないと、
根拠も無く言い張りたいのか。
失言というより暴言に近いだろう。

又、こんな発言も。

「なぜ女系天皇はだめなのか。

今、女系天皇論を唱えるということは、憲法で定められ、
皇室典範で定められている男系男子の継承者、つまり
秋篠宮殿下と悠仁親王殿下を廃嫡にするということです。
これは凄まじい革命です。
…愛子さまを天皇にということの本質は、革命的なのです。
古代の壬申の乱のような大きな騒動になると思います」
(櫻井よしこ氏)改めて言う迄もなく、憲法には「男系男子」の「定め」
はどこにも無い。
それは専ら皇室典範に委ねられている。

「廃嫡」というのは、家の跡継ぎをする(はずの)子を、

その地位から外すことを意味する。
皇室の場合は、次代の天皇になられるべき「皇太子」が、
その地位を失うような事態がそれに当て嵌まるだろう。
その場合は「廃太子」という特別な言葉がちゃんとある。
しかし、秋篠宮殿下は“皇太子”ではいらっしゃらない。
だから「廃太子」という言葉は使えない。
そこで仕方なく、民間の言葉を“不正確”に転用しようと
しているのか。

だが、皇太子と“皇太子でない皇嗣”では、
お立場が大きく異なる。
皇室典範は、皇太子(及び皇太孫)には皇籍離脱の
可能性を一切、認めていない。
一方、皇太子(皇太孫)でない皇嗣の離脱の可能性は
否定していないのだ(11条2項)。

皇太子(皇太孫)でない皇嗣が、その地位を失うことは
普通に起こり得るし、現に、これまでもそうした実例は
あった。
それは「廃嫡」ではなく、ましてや「凄まじい革命」(!)
なんかでは到底あり得ない。
それにしても、天皇陛下のお子様(直系の長子)で
いらっしゃる敬宮(としのみや)殿下が即位されたら何故、
「革命」になるのか。

そもそも、敬宮殿下は“男系”の女子でいらっしゃる。
「なぜ“女系”天皇はだめなのか」という文脈で、敬宮殿下を
敢えて排除する意図が理解できない。
「壬申の乱」云々については絶句するのみ。


なお、昨日のブログに「女性議員活躍の会」と書いたのは、
正しくは「女性議員飛躍の会」でした。
お詫びして訂正します。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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