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高森明勅
2020.7.11 06:00皇統問題

天皇・皇族の配偶者は皇族になられる

女性天皇や女性宮家に対する懸念の1つに、配偶者の位置付けがある。
歴史上、男性が国民として生まれながら、結婚を介して皇族になった
前例は無い。
だから、女性天皇・女性宮家を認めて、その配偶者たる男性を
皇族に迎えるのは、皇室の伝統に反するのではないか、
という心配だ。

これについては、2つの事実を知っておくべきだろう。

1つは、皇室は「前例」を踏み越えることで、長きに亘(わた)る
存続と発展を可能にして来た、という事実だ。
例えば、皇位の“しるし”の三種の神器(じんぎ)の中でも
最も尊いとされる神鏡を、皇居から遠く離れた、伊勢の聖地に祀(まつ)
ることは、第11代・垂仁(すいにん)天皇より前には全く前例が無い
(これが伊勢の神宮)。或いは、わが国の君主の称号を「天皇」とするのも、第33代・推古天皇
までは例が無かった(“天皇”号が第40代・天武天皇から始まったとする
説もあるが、採用しない)。

皇位の継承に伴う大嘗祭(だいじょうさい)も、20年に1度の
伊勢神宮の式年遷宮(しきねんせんぐう)も、前例の無い行事が、
天武天皇のお考えを受けて、第41代・持統天皇の代から始まった
(天武天皇の時の“大嘗祭”は皇位継承儀礼としてはまだ過渡的)。

近い時代の出来事では、第124代・昭和天皇がお始めになった、
ご自身による宮中の水田でのお田植え等々。
どれも前例が無いものばかり。
それらを一切、否定すべきなのか。
むしろそのように、慎重かつ大胆に前例を乗り越えて行ける
“柔軟さ”こそ、皇室の偉大な伝統と言えるだろう。

そもそも、皇位の安定継承を困難にしている、「側室不在」が
普通の状態となり、非嫡出による継承の可能性が排除された
こと自体、前例が無い。

2つ目は、国民として生まれた女性が、ご結婚を介して
皇族になれるようになったのも、明治以来のこと。
それまで前例が無い。
だから、前近代の例に従えば、今の皇后陛下も上皇后陛下も、
或いは他の妃殿下方も、皆様、皇族の身分を得られなかったはずだ。

しかし、これらの方々が皇族でいらっしゃる事実に、
僅かでも違和感を抱く国民は、ほぼ皆無だろう。
そうであれば、国民男性がご結婚という人生の一大事を介して
皇族になられるのも、特に変わりはない。
にも拘らず、このこと“だけ”に拒絶感があるという人は、
皇室の伝統とは関わりなく、単に男女差別を自明視する感覚の
持ち主なのではあるまいか。

以上によって、女性天皇・女性宮家の配偶者を皇族として
お迎えするのは、至って自然なことであると理解できるはずだ。
なお、その場合、ご結婚に際して、皇后陛下や上皇后陛下、妃殿下方が
皆様、(皇族の代表と三権の長が一堂に会する)皇室会議の同意を
得られたのと同じ手続きを踏まれることは、改めて言うまでもない。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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