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高森明勅
2020.8.4 06:00皇統問題

皇統問題のタイムリミット

皇位の安定継承を目指す皇室典範の改正。
20年・30年も先まで延ばしてよい、と勘違いしてはならない。
タイムリミットが迫っている。
今のままなら、内親王・女王方は皆様、ご結婚と共に皇族の身分を
離れられる。

差し当たり、女性宮家の対象と考えられるのは、天皇とのご血縁が近い内親王方。
しかし、秋篠宮家の内親王方については、眞子殿下だけでなく、
佳子殿下についても近頃、(その信憑性はともかく)ご結婚を巡る話題
が浮かび上がっている。

10年後には、30歳手前の敬宮殿下も既にめでたく結婚されている可能性がある。
たとえ対象を女王にまで広げても、(女王方は皆様、敬宮殿下よりお歳上であり)
その頃は、内親王・女王方はどなたも、ご結婚によって、皇族の身分を去られて
いるかも知れないのだ。

今の皇室典範は(明治典範増補の規定を踏襲して)、一旦(いったん)
皇族の身分を離れて「国民」の仲間入りをされた方の皇籍復帰は、一切、
認めていない(第15条)。
皇室の「聖域」性を守り、国民との“区別”を曖昧にしない為の、大切な原則だ。

「一たび皇族の身分を去られし限り、これが皇族への復籍を認めないのは、
わが皇室の古くからの法である。
明治40年の皇室典範増補“第6条 皇族の臣籍に入りたる者は、
皇族に復するを得ず”とあるは、単なる明治40年当時の考慮によりて
立法せられたるものではなく、古来の皇室の不文法を成文化されたものである。
この法に異例がない訳ではないが、賜姓(しせい)の後に皇族に復せられた事例は
極めて少(すくな)い。

…この不文の法は君臣(くんしん)の分義を厳かに守るために、
極めて重要な意義を有するものであつて、元皇族の復籍と言ふことは
決して望むべきではない」(葦津珍彦氏)

以上のようであれば、もし「その後」に女性天皇や女性宮家を認める
典範の改正が実現しても、“もう手遅れ”。
制度のみがあっても、実際にそれを担う皇族が誰もいらっしゃらない。
なので、全く無意味だ。

そうすると、天皇陛下の「次の世代」で皇室に残るのは、
悠仁親王殿下ただ“お1人だけ”となる。
皇位の継承も皇室それ自体の存続も、”たったお1人“の悠仁殿下が
結婚されるか否か、ご結婚後にお子様に恵まれるか否か、
そのお子様が男子か否かに、“全て”が懸かって来る。
その想像を絶するプレッシャーの中で、果たして悠仁殿下とのご結婚を
決断できる女性が現れるか、どうか。

ただでさえ皇族のご結婚は、一般とは異なるハードルの高さがある。
しかし、それよりも遥かに至難な事態が予想できる。
その結果、万が一にでも悠仁殿下がご結婚されなければ、
畏れ多いがもうそれだけで、皇室は殿下のご一代を最後として、
長い歴史に幕を閉じることになろう。

そうした最悪の局面を避ける為にも、可及的速やかに典範の改正に手を
着けなければならない。
タイムリミットは、ごく一部で誤解されているような、(今のところ)
将来に予想されている悠仁殿下のご即位や、更に先のご譲位の時点なんかでは、
勿論ない。

そんな悠長な話では断じてなく、内親王方が(恐らくこの数年のうちに)
結婚される“前”に、きちんとした制度改正を行うことが出来るか、どうか。
それによって、皇室が今後も末永く存続できるか否かが「決定」する。

そもそも、当事者でいらっしゃる内親王方は、お生まれになって以来、
ご結婚後もそのまま皇室に残られるかどうか(それは目が眩〔くら〕むような
違いだろう)、政治の無為無策と国民の無関心のせいで、いつまでもご自身の
未来を見通せないまま、現在に至っている(非力ながら、私がこの件で声を
挙げ始めたのは、今から四半世紀近く前の平成8年頃から)。

人生でこれほどお辛いことはあるまい。
憲法で自由と権利が保障されている「国民」なら、決してあり得ない
残酷さではあるまいか。
人道的な見地からも、もはや先延ばしは許されない。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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