「皇室問題は当事者の考えも重要」(所功氏)という指摘がある。
これは全くその通り。
当事者のお気持ちを頭から無視するような議論は、到底認められない。
しかし、万が一にもそれを口実にして、皇室存続の為に必要不可欠な制度改正を、
徒(いたずら)に先延ばしすることがあってはならないだろう。
女性宮家の創設と当事者のお気持ちの関係をどう考えるべきか。
私が以前、女性議員飛躍の会(稲田朋美共同代表)でお話した内容を紹介する
(同会編『皇位継承 論点整理と提言』より。但し、一部手を加えた)。
「ご本人のお気持ちはもちろん重要です。
これまでのルールならご結婚とともに皇族の身分を離れられる。
国民の仲間入りをされる。
そうすると、これまで制約されてきた自由や権利がさまざま
認められることになります。
そのような人生を思い描いてこられたのに、急に制度が変わって、
ご結婚後もそのまま皇族にとどまられることに、にわかにご納得いただけない
場合もあるかもしれません。
その場合も、大変申し訳ないのですが、一般の国民とはお立場が違うので、
憲法第3章に列挙してある権利や自由が、無条件で保障されるわけでは
必ずしもない。
皇室典範が改正されて女性宮家を創設する制度になれば、
(対象となる内親王方は)基本的にはそれに従っていただくことになります。
それが、憲法第1章の『世襲』の『象徴』天皇という仕組みを設けている
ことに伴う、憲法上の“要請”ということになるでしょう。
その点は、一般国民を対象とする旧宮家案(があくまでも当事者の同意を
大前提とするの)と異なります。
ただし、(ご結婚に伴い)皇族の身分をどうしても離れたいという
お気持ちが強い場合は、皇室典範第11条の規定(皇族の身分の離脱)を
適用して皇籍を離脱されることになるでしょう。
しかし、前提条件が旧宮家案と女性宮家案では(皇族と一般国民という、
それぞれの対象者の身分の違いに対応して)まったく違う点を
見逃してはなりません」
“当事者”の方々は、むしろご自身の将来が“引き裂かれ”、
いつまでも決着しないことに、不安を抱き続けておられるのではないか。
政府・国会の責任は重大だ。
国民もこれ以上、政治の怠慢を許してはならない。
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