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高森明勅
2020.8.13 06:00その他ニュース

魂の行方

歌人で國學院大學名誉教授の岡野弘彦氏。
昭和天皇の作歌のご相談に預かるなど、和歌を通じて
皇室とのご縁も浅くない。

民俗学者の折口信夫(おりくちしのぶ)の家に同居して指導を受け、
その死を看取った。

折口の学問上の“遺言(ゆいごん)”と言うべき論文「民族史観における他界観念」
(昭和27年)の口述筆記に当たったのも、岡野氏だった。

その岡野氏が、同論文について、以下のように述べておられた。

「あれ(同論文)は柳田(国男)先生からの問いかけに対する、
返事だったのかもしれない、と思うんです。
戦後の昭和24年の春、折口は柳田先生を訪ねて、一緒に桜の花を見て、
また民俗学研究所に戻った。

そこで柳田先生は、『われわれは戦争中の若者たちが桜の花の散るように
死に急いで、自分の命を死地に捨てるのを見てきた。
こんなにして若者が命を絶つことをいさぎよしとし、みずから死ぬことを
美しいと考える民族は世界中にないのじゃないだろうか。
折口君はどう思います』とおっしゃった。

つまり、そういう思いを持つ民族はあったとしても早くほろびて、
海に囲まれた日本だけに残っているのではないか、という疑問を折口に
投げかけた。

折口はそのとき何も答えなかったのです。
二人とも暗い顔をして沈んで考えていたことがありました。

その時、何も答えなかった折口の柳田先生への一つの答えが
『民族史観における他界観念』だと思うんです」
(井上ひさし・小森陽一編著『座談会 昭和文学史』第2巻、平成15年)と。

この発言に触れて、早速、書斎の高い棚の奥に埃(ほこり)を
被(かぶ)っていた『折口信夫全集』(中公文庫版、全31巻・別巻1巻)
から同論文を探し出したのは言う迄もない。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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