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高森明勅
2020.9.23 06:00皇室

憲法における「天皇」と「国民」

憲法には何ヵ所か、「天皇」と「国民」を併記している条文がある。以下の通り。

第1条
「天皇」は、日本国の象徴であり日本“国民”統合の象徴であつて、
この地位は、主権の存する日本“国民”の総意に基(もとづ)く。
第7条
「天皇」は、内閣の助言と承認により、“国民”のために、
左の国事に関する行為を行ふ。
第96条第2項
憲法改正について前項の承認(衆参両院の3分の2以上の賛成を踏まえ、
国民投票での過半数の賛成ー引用者)を得たときは、「天皇」は、“国民”の名で、
この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

先ず、第1条。
天皇と国民が、「象徴するもの」と「象徴されるもの」という関係に置かれている。
この両者の関係は、「代表するもの」と「代表されるもの」が“同質”である
(代表=一部分によって、それの“属する”全体を表し示す)のに対し、
“異質”である(例えば「鳩と平和」)ことを前提とする。

この点から、天皇が国民では“ない”のは、明らかだろう。
もし天皇も国民ならば、「代表」にはなり得ても、「象徴」であることはできない。
後段に、天皇の“象徴”という地位が「国民の総意に基く」とあるのも、
上記の件を考え合わせて、天皇が国民では“ない”ことを踏まえた規定と
見るのが、最も整合的だろう。

次に、第7条に「国民のために」、第96条2項に「国民の名で」とあるのも、
それぞれ、天皇が国民では“ない”と理解してこそ、素直に納得できる。
そもそも、憲法は“第1章”に天皇(および皇室)に関係する条文をまとめ
(例外的に第88条に「皇室財産」についての規定がある)、一方、
国民については“第3章”に一括する。

こうした章立て自体からしても、憲法上、天皇(および皇族)と国民が
“別の”範疇(はんちゅう)に属するのは、疑う余地があるまい。
以上のように、憲法を素直に読む限り、佐藤幸治氏(憲法学者・京都大学名誉教授)
による学説整理にある「C説」、つまり天皇(および皇族)は国民ではない、
という結論以外は導き難いはずだ。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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