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高森明勅
2020.11.17 06:00政治

判決文の中の三島「天皇論」

「三島事件」裁判の判決文。
三島由紀夫の「天皇論」についても、立ち入って論及していた。

「三島は、かねてより天皇をもって日本の歴史、文化、伝統の中心であり、
民族の連続性、統一性の象徴であるとし、かくの如(ごと)き
天皇を元首とする体制こそが政治あるいは政体の変化を超越する
日本の国体と呼ばれるべきもので、この国体こそが真の日本国家存立の
基礎であって、これは、現在は勿論(もちろん)将来に亘(わた)っても
絶対に守護されるべきものであること、また軍隊は、現状に照らせば
国を守るためには必須不可欠の存在であり、その建軍の本義は、
真に日本を日本たらしめている右(みぎ=上記の)国体を護持する
ところにあるという観念を抱き、従って憲法上も天皇の地位を元首と
するとともに、軍についても明確に規定すべきであると主張していた。

…三島は、元来(がんらい)日本の古典文化、伝統文化に
深く傾倒していたものであるが、昭和35年(1960年)のいわゆる
安保闘争を目の前にして、これを共産主義をはじめ左翼勢力が
青年達を支配している状況として把握し、これを憂え、
このまま放置する時は日本が危殆(きたい)に瀕(ひん)すると考えた…
この時期を転機に三島は、日本古来の精神文化の一層の吸収に努め、
日本固有の伝統や文化を強調した独自の天皇論、国体論を基礎づけて
いったのである。

ただ、ここにおける天皇は、文化概念としての天皇であるとし、
その非政治的な性格を強調するという独特なもので、軍隊との関係も、
天皇はこれに軍旗を授与し、栄誉を与える権能を有するに止(とど)まり、
統帥(とうすい)権を有することはないとし、憲法改正においても右に止まり、
言論の自由、議会制民主主義の擁護を説く極(ご)く
穏健(おんけん=おだやかで、行き過ぎや誤りの無いこと)なものであった」と。

勿論、三島由紀夫の天皇論は、ここで触れらている所で尽きるものではないものの、
その「文化概念としての天皇」という立論を、「極く穏健」と評
価していることに注目すべきだろう。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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