来年は、いよいよ皇位の安定継承を巡って、
政治の場で一定の決着を迎えそうだ。
まさに正念場。
この問題について発言して来た論者の中で、男系「絶対」論者というのは、
実は意外と少ない。
この点、今も誤解されている気配があるので、改めて指摘しておきたい。
例えば、百地章氏は、男系優先を強調されつつ、
「万一の場合には、皇統を守るために、女帝さらに女系の選択ということもあり得る」
(『憲法の常識 常識の憲法』)と明言されている。
八木秀次氏も同様だ。
「正直に言えば私とて、女性天皇に絶対反対というわけではない。
男系継承という道を探して、万策尽きた場合には女性天皇も
女系天皇もやむを得ない」(『本当に女帝を認めてもいいのか』)と。
八幡和郎氏、「女帝や女系が必要だとなれば私はそれでもいいと思う」
(『皇位継承 論点整理と提言』)。
新田均氏、「私の立場は、女系容認を絶対的に否定するものではない」
(『別冊正論Extra14』)。
宇山卓栄氏、「『女系継承であれば、もはや天皇ではない』という
見解がありますが、私はそういうことは言いませんし、思いません」
(『世界史で読み解く「天皇ブランド」』)。
等々。
皆さん、男系男子「優先」を主張されながら、一方では女性・女系天皇も
“容認”しておられる(だから男系「絶対」ではない)。
そうした中で印象的だったのは、ある番組の収録で竹田恒泰氏と
ご一緒した時のこと。
私との討論で少し興奮気味だった竹田氏は、遂に
「男系じゃない皇室なんて、必要ないんだ!」という趣旨の発言を、
大声でされた。
すると間髪を入れず、その場におられた俳優の津川雅彦氏が、
「そんなことを言うものではありません」と強い口調で窘(たしな)められた。
すると、竹田氏が「僕はそんなことは言っていません」とたちまち
前言を撤回される場面があった。
これはさすがに編集でカットされるかと思っていたが、
そのまま放送されたようだ。
竹田氏は、最近もこんな言い方をされている。
「“安易に”天皇の『血統の原理』を変更することは慎まなければなりません」
「歴史的にも正統な皇位継承資格者を確保することを“先に”検討すべきでしょう」
(産経新聞、12月15日付。“”―引用者)と。
勿論(もちろん)、ここで「血統の原理」とか「正統な」と
述べておられることの中身については、私の立場からコメントすべき
余地があるものの、慎重に「安易に」とか「先に」という、
限定的・抑制的な言い回しをされている点は、興味深い。
男系「絶対」の立場なら、もう少し違った表現になっただろう
(例えば、「安易に」→「何としても」、「を先に」→「だけを」とか)。
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