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高森明勅
2020.12.26 06:00皇室

大正天皇の御製詩

大正天皇がお詠みになった御製詩(ぎょせいし、漢詩)の数は、
歴代天皇の中で随一。
しかも桁外れに多い。

『列聖全集』(後に「皇室文学大系」として復刊)に収める歴代天皇の中で、
最も多いのが嵯峨天皇(第52代)と後光明天皇(第110代)で、共に
98首(西川泰彦氏『天地十分春風吹き満つ』)。

これに対し、大正天皇の場合、確認できているだけで1367首という
(木下彪氏『大正天皇御製詩集謹解』)。
これは、「全集」に収める御製詩の総数358首より多い。
大正天皇の御製詩は、雄大な国史の回想からご日常のさりげない
感情の動きを写し取った御作など、実に多彩だ。
ここでは、「古祠(こし)」(大正3年)一首を謹んで掲げさせて戴く。

林間、古祠有(あ)り。
清浄、霊境と称す。
払暁(ふつぎょう)、神に賽(さい)し来(きた)る。
里人、心自(おの)ずからイマシ(人偏+敬)む。

村の外れの林。
その中に、古く小さなお祠(ほこら)がある。
常に清らかに保たれ、村人はここを神霊がいらっしゃる場所と呼んで、
敬っている。
朝早く、日頃の神の恩恵への感謝の気持ちを込めて、
皆、丁重にお参りを欠かさない。
人々の心は、こうした長年にわたる伝統的な振る舞いによって、
自ずから節度を保つことが出来る。

およそ、そのような意味だろう。
静かで穏やかな調べ(言葉の調子)の内に、当時の日本人の道徳心の
根底に目を届かせられたような御作だ。
それにしても、大正天皇はどのようにして、こうした庶民の暮らしぶりを
ご存じになったのか(西川氏の著書では「東宮〔とうぐう、皇太子〕時代の
行啓〔ぎょうけい、お出まし〕の折の見聞」かと想像された)。

国民の生活の実情に深いご関心がなければ、
そもそもこうした御製詩が詠(よ)まれるはずはないだろう。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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