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泉美木蘭
2021.1.8 19:49

香山リカ氏「若者の死亡率が高い」←それフランスの話です

香山リカ氏が、ツイッターで、

「インフルに比べコロナは重症の呼吸器合併症を起こしやすく、
院内死亡率約3倍。とくに若者の死亡率が高い。」
と発信し、論文の写真を投稿されているとのことなのですが、
これは、ものすごく恣意的に論文の一部分だけを撮ったものです。

写真を見たところ、元の論文は、
「Lancet Respir Med.」オンライン版に2020年12月17日掲載の

「Comparison of the characteristics, morbidity,
and mortality of COVID-19 and seasonal influenza:
a nationwide, population-based retrospective cohort study」
(COVID-19と季節性インフルエンザの特徴,罹患率,死亡率の比較:
フランス人口ベースのレトロスペクティブコホート研究)
https://doi.org/10.1016/S2213-2600(20)30527-0

を日本語訳したもののようです。
まず、そもそもこの論文は、フランスの入院患者のもので、
日本人のデータではありません。

2020年3月1日から4月30日に入院したコロナ患者89,530人と、
2018年12月1日から2019年2月28日に入院したインフルエンザ患者
45,819人を比べたもので、

思春期の患者(11~17歳)について、
コロナの院内死亡率は458例中5例だったので「1.1%」
インフルの院内死亡率は804例中1例だったので「0.1%」と計算し、

「1.1%(5人)」 vs 「0.1%(1人)」
=「コロナのほうが若者の死亡率が10倍高い」


と結論したものです。
6万6000人以上の死者が出ているフランスで、5人か1人かという
誤差の範囲のような数字から「10倍高い」と比較するのはかなり
注釈が必要な表現ではないかなと思いますが、

日本では、3月~4月の期間、10代の死者は報告されていないので、
「やっぱり日本人とヨーロッパ人は違うんだなあ」という感想を
私は持ちました。

また、この論文によると、
フランスでは、コロナ患者はインフル患者と比べて、
「肥満または過体重であることが多く、糖尿病、高血圧、脂質異常症
が多かった」そうで、死者も「肥満または過体重が多かった」と
書かれています。

『新型コロナ-専門家を問い質す』P83の脚注13にも書いたとおり、
日本の肥満度は世界191か国中182位とかなり痩身です。
欧州諸国とは基本的に体質が違っているのです。

日本では、ワクチンもあり治療薬もあるインフルエンザで、
年間、直接死3000人、間接死10000人。

冬場は「1週間で205万人」など平気で報じられていました。

しかし、コロナは、日本においては、これをぜんぜん凌駕しないから、
わざわざフランスの論文の、若者の死者「5人vs1人」の部分を
クローズアップして「とくに若者の死亡率が高い。」と発言したのだ
と思いますが、あまりにも恣意的と言わざるを得ません。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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