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高森明勅
2021.1.28 06:00皇統問題

「男尊女卑」と女性天皇排除

現在の皇室典範は皇位継承資格を「男系男子」に限定して、
皇統に属する女性・女系皇族のご即位を、全面的に排除している。
これは明治の典範の規定を踏襲したもの。

明治典範がそのような規定を設けたのは、
伊藤博文のブレーンだった井上毅(こわし)の考えが
強く反映している。
では、井上は何故、女性・女系を排除したのか。

シナ父系制(男系主義)に由来する
(今やすっかり過去のものになった)「姓」の観念
(→これが女系排除の理由)の他に、当時の「男尊女卑」の風潮
(→これが女性排除の理由)があった(井上「謹具意見」)。

男尊女卑の価値観を前提とすれば、女性天皇がご結婚によって
皇婿(こうせい=女性天皇の配偶者)を迎えられた場合、
一般国民から天皇の地位よりも“高い”位置にあると
見られてしまって、極めて不都合なことになる一方、
女性天皇に独身を強制すべきではないので、
そもそも女性天皇を認めるべきではない、というロジックだった。

「男を尊び女を卑しむ慣習、人民の脳髄を支配する
我国(わがくに)に至(いたり)ては、女帝を立て皇婿を
置くの不可なるは多弁を費(ついや)すを要せざるべし」と
(「謹具意見」が引用した沼野守一の意見より。
元々の出典は、明治15年3~4月に自由民権結社・嚶鳴社
〔おうめいしゃ〕で行われた討論の筆記「女帝を立つるの
可否」)。

このような意見が、現代日本においてとても通用しないことは、
改めて言う迄もあるまい。
江戸時代の女性の地位はイングランドに比べても、より高かった
(中村敏子氏)。

古代に遡っても、男尊女卑のシナとは異なり
「未婚・既婚を問わず一女性としてそれなりの社会的地位を認められ、
それにふさわしい活動を行っていた」
「共同体の祭祀の場でその地位や役割を認められていた」
「所有主体、売買主体、債権・債務の主体ともなり得た」(成清弘和氏)

という指摘がある。元来、最高神、皇祖神を“女性”
とする国柄なのだ。
ところが、一般的なイメージとは異なり、男性の権利や
自由・平等が進展した近代以降、かえって「男尊女卑」、
女性差別の傾向が激しくなったのではあるまいか。

シナの男尊女卑思想から影響を受けていた前近代でさえ、
女性皇族のご即位が認められていたのに、明治になって
上記のような理由で全く排除された事実からも、
そのように見るのが妥当だろう。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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