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高森明勅
2021.3.30 06:00皇室

皇后陛下を仮病扱いした「保守」知識人

もう10年以上も前になる。

『WiLL』誌上で、西尾幹二氏による天皇・皇后両陛下

(当時は皇太子・同妃)への常軌を逸したバッシングが、
執拗に続けられた(当時の同誌編集長は花田紀凱氏)。
それには後日談がある。

同連載を視聴率が稼げるネタと判断したのか、
テレビ朝日の「朝まで生テレビ」がテーマに取り上げた。
私にも出演依頼があったものの、この時ほど迷ったのは珍しい。
出れば、西尾氏と真正面からぶつかるのは、避けられない。
しかも失礼ながら、もし他の出演者が同氏を批判しようとしても、
十分に粉砕する迫力に欠けるのではあるまいか
(同氏への賛同者すら少なくない可能性もある)。

その点、他ならぬ皇室がテーマであり、皇室の尊厳を
お守りしなければならないのであれば、私は情け容赦なく
“撃滅”するだろう。
現に、同氏の皇室攻撃はどうしても撃滅する必要があった。
従って、公的には是非とも私が出演すべきことは明らかだった。
しかし当時の私は、個人的に同氏とそれなりに接点があった。
だから私情においては、そのような激突は極力、避けたいのが
偽らざる気持ちだった。
誰かが、同氏の暴論を見事、木っ端微塵にしてくれるなら、
私が敢えて出るには及ばない。
そういう思いも強かった。
だが、それは叶わぬ願いだろうと考え、私的な感情は捨てて、
出演を決意した経緯がある。

番組では、手前味噌ながら一応、私が果たすべき役割は
果たせたように思う。
一旦、決断した以上、ためらいは一切なかった。
それよりも、番組中、同氏がこんな放言をしたのが、忘れられない。

「雅子妃(皇后陛下)は来年の今頃には全快しています!」と。
出演者は皆、驚いた。
司会の田原総一朗氏が当然、問い質した。
「どうしてそう言い切れるのか?」と。
その時、同氏は平然とこう言ってのけた。
「だって仮病だから!!」。
この瞬間、同氏がそれまで言論人として築き上げて来た信頼感は、
立ち所に失われた、と言っても、恐らく言い過ぎではあるまい。
この予言(?)は勿論、外れたし、外れたことに対して、
同氏が謝罪したとか、弁明したという話を(少なくとも私は)
聞かない。

周知の通り、皇后陛下は今もご療養を続けておられる。
この事実を、同氏はどう受け止めるのか。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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