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高森明勅
2021.4.18 06:00政治

世界でも類いまれな「戦力」不保持を自国に強制する憲法

わが国は、自国が「戦力」を保持することを禁止した、
世界でも類い稀(まれ)な憲法を持っている。
従来、コスタリカ共和国(人口=499万人)の憲法が軍隊を
否定していると喧伝されて来た。
だが、その実態は井上達夫氏の報告に詳しい。

同憲法には「米州(アメリカ州、南北アメリカ)の協定により
又は国防のためにのみ、軍事力を組織することができる」(12条)

「コスタリカ人は…祖国に奉仕し祖国を防衛し…なければならない」(18条)
などの規定があった(『属国の9条 ゴー宣憲法道場Ⅱ』毎日新聞出版)。

又、軍隊を廃止した(アメリカによって解体された)
パナマ共和国(人口=422万人)の憲法にも「すべてのパナマ人は、
国家の独立と領土の防衛のために武器を持つ義務がある。
…外部からの侵略の脅威のある場合、一時的に法律によって、
共和国の国境と管轄を保護するために、特別警察組織を設置する」
(310条)などの規定がある(前田朗氏『軍隊のない国家』日本評論社)。

一方、わが国の憲法の場合、祖国防衛の義務を定めた条文が無いのはもとより、
9条2項の規定により、「戦力」の不保持が“強制”されている。
その為、自衛隊が憲法違反を免れるには、いつまでも「戦力」未満の
“非”軍隊でなければならない。
そのことは、(安倍晋三氏が提案していた)9条2項を維持したまま、
ただ「自衛隊」を書き加えるだけの改正では、何も変わらない。

むしろ、憲法改正のモメントを失わせ、
自衛隊の現状を固定化してしまう結果を招く恐れが強い。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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