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高森明勅
2021.5.6 06:00政治

立憲民主党のエリート・プラグマティズムはまさに反立憲主義

5月3日の「憲法記念日」に立憲民主党が公表した談話は以下の通り。

「新型コロナの感染拡大防止のために真に必要な権限は、
『公共の福祉』にかなうものとして現行憲法下でも
認められている。

政府がここまで無策、不十分、的外れな
対策しかできなかったのは、政府の権限が限定されているからでも、
緊急事態条項が憲法に明記されていないからでもない。

政府が、国民の命と生活を真正面から背負うことに怯み、
小手先の施策に終始してきたからだ」。

私は、菅政権の新型コロナ禍へのこれまでの対応を、
ことさら擁護するつもりはない。
科学的知見に立脚するよりも、ポピュリズムに押し切られる
傾きが強かったのは、とても残念だと思っている。

しかし、同党の談話は、まさに憲法学者の横大道聡氏が
ゴー宣道場拡大版で批判された「エリート・プラグマティズム」
そのものであり、むしろ危険なものを感じる。
この談話から透けて見えるのは、2つ。
1つは、とにかく政府を批判するという動機。
今年は衆院選挙を控えているので、この動機がより
前面に出てしまうのだろう。

もう1つは、憲法改正をひたすら回避すること。
この2点を見ても、同党はいつの間にか、すっかり
“第2社会党”のようになってしまった(正確には“より弱体化した
社会党”か?)。

しかし、上記談話は、裏返せば次のように主張しているに等しい。

「政府は、今の憲法のままでも、茫漠とした『公共の福祉』
という概念をどこまでも拡大させれば、統制なき権力を
振るうことが出来て、国民の自由や権利を好き勝手に制約できる」と。

つまり、憲法に「緊急事態条項」を追加して、憲法に基づく政府の
(緊急事態に限定した)国民への「規制」を強める一方、
それを発動する為の要件や手続き、事後の救済、検証義務など、
政府への「統制」もより厳格化するのではなく、
「(政府への)統制」なき「(国民への)規制」の強化が、
「“公共の福祉”にかなう“真に必要な権限”」として、
憲法の拡大解釈だけで十分に可能(!)という発想だ。

これは憲法“改正”が無用なだけでなく、自由・権利の擁護と
政治権力の統制という、憲法の「存在理由」自体を軽視して
いるので、ほとんど憲法“そのもの”を無用視しているに近い。
絵に描いたような“反”立憲主義的な考え方ではあるまいか。

「立憲」民主党という党名が、今や同党への最も辛辣な
皮肉に転化しているのは、喜劇か、それとも悲劇か。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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