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高森明勅
2022.5.11 09:00皇統問題

唯一の誠実で正直な「男系限定」論とはどのような“論理”か?

皇位継承の「男系限定」を主張する意見の中で、
ほとんど唯一、誠実かつ正直な議論と思えるものは、
以下のような論だろう(
神社新報社政教研究室『天皇・神道・憲法』昭和29年。
執筆は葦津珍彦氏)。

「日本皇室の万世一系とは、男系子孫一系の意味であることは論をまたぬ。
…然〔しか〕しながら現行憲法は、憲法自身としては皇位継承については、
ただ世襲の条件を規定するのみであつて、女系も亦〔また〕世襲と
称することを得べく、かやうな根本的変革案も、合憲的に一片の
法律の改変手続〔てつづき〕を以て行ひ得ることとなつてゐるのである」
(→憲法の「世襲」規定それ自体は男系・女系の両方を含む)

「帝国学士院発行の帝室制度史に掲げられている
皇位継承表の中から、庶出〔非嫡出〕の事例を算〔かぞ〕へて見るに、
それは少なくとも55代に達する。
然〔しか〕もこの55代と云ふ数の中には、仁孝天皇や明治天皇の如〔ごと〕く、
皇后(中宮)の実子仰出〔じっしおおせいだ〕されし
〔非嫡出でも形式上は“嫡出”として扱った〕場合を含んではゐないのである。
…〔したがって〕女系継承を認めず、しかも庶子継承を認めないと云ふ
継承法は無理をまぬかれぬ」
(→男系限定は非嫡出・非嫡系の継承によってこそ支えられて来た)

「皇庶子の継承権を全的に否認することは、
皇位継承法の根本的変革を意味するものであり、同意しがたい所である」
(→男系限定を維持する為には、非嫡出・非嫡系による
継承を復活する以外にない)

「この問題と相関連して、占領下に皇族の籍を離れられた
元皇族の復籍ということが一応問題として考へられるであらう。
この間の事情については、論ずべき問題も少なくないが、
その事情の如何〔いかん〕に拘〔かかわ〕らず、
一たび皇族の地位を去られし限り、これが皇族への復籍を認めないのは、
わが皇室の古くからの法である。
…この法に異例がない訳ではないが、賜姓〔しせい=臣籍降下、皇籍離脱〕
の後に皇族に復せられた事例は極めて少ない
(植木直一郎“皇室を制度礼典”参照)
この不文の法は君臣の分義を厳かに守るために、
極めて重要な意義を有するものであつて元皇族の復籍
という云ふことは決して望むべきではないと考へる」
(→皇室と国民の区別を厳格に守る為に、元皇族
〔その子孫でなく〕本人が復籍することさえも、認めるべきではない)

一先ず「男系子孫一系」を“絶対的”価値と仮定すると、
これはこれで筋の通った議論だろう
(いわゆる旧宮家プランは皇室の尊厳、「聖域」性を
守る観点から一蹴されている)。

しかし、ここで男系維持のために不可欠とされている
(側室制度を前提とした)「皇庶子の継承権」(非嫡出・非嫡系よる継承可能性)
を復活させることは、少なくとも予想し得る将来も含めて、
残念ながら実現しがたい。

それが実現不可能なら、論理必然的に「女系継承」を認めない限り、
皇位継承法として「無理をまぬかれぬ」というのが、最終の結論になる。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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