「小林よしのりは作品を通じてSNS に事実ではない情報を流し、秋篠宮家バッシングをけしかけている」という悪質なデマを述べた、自民党・和田政宗参議院議員の講演録記事の全文(「祖国と青年 令和7年4月号」)を読みました。
全体を読んでみると、高森先生が引用していた誹謗中傷箇所以外にも、首を傾げる箇所ばかりの内容となっています。
違和感は、記事のタイトル及びサブタイトルからさっそく始まります。この記事は、
メインタイトル:旧宮家男系男子の皇籍復帰、 憲法改正の実現を
サブタイトル:私はなぜLGBT 法案に反対し、選択的夫婦別姓に反対
となっており、メインとサブでテーマが食い違っています。
実はこれ、講演全体の構造そのまま。8ページの講演録のうち、実に3ページが「選択的夫婦別姓に関する自説の主張」で、そこに皇室に関連する話は一切出てきません。
その後の「なぜLGBT法案に反対したのか」という段になって
まさに今、リベラルの人たちによって日本の家族が 壊されようとしています。その先には何があるかと言 えば、皇室の破壊、解体です。
と、半ば唐突に皇室が持ち出されます。その先も引用してみましょう。
私が一昨年六月に成立したLGBT 法案に反対したのには様々な理由がありますが、最大の理由は日本共 産党の志位和夫委員長の発言です。志位委員長は、令和元年六月の『AERA 』で「性的マイノリティーの方など、多様な性を持つ人びとが天皇になることも認められるべきだ」と述べています。
共産党が言うように、もしこうした方が天皇に即位 したら、共産党は何と言うでしょうか。「万世一系の 男系男子ではなくなったのだから、もう皇室はなくそ う」と言うに決まっています。だから、LGBT 法案 は絶対に通してはならない、蟻の一穴にしてはならな い、というのが私が反対した最大の理由でした。
この中で挙げられている、共産党・志位和夫前委員長のインタビューはこちらに掲載されています。
志位氏の発言の要点は、女性・女系天皇容認をさらに掘り下げた所の「性別やセクシャリティによって皇位継承の資格に差を作らない」という主張でしょう。一つの意見として、充分に成立するものです。
一方で呆れ果てるのは、その後で述べられている和田の行動。
場内で反対することもできたのですが、それだと立憲民主党などと一緒になってしまうので、退席して、明確にメディアに対して反対の意思を示しました。私は 菅義偉元総理のグループにおりますので、前日、菅元総理の執務室を訪ねて、こういう理由で明日は退席して反対の意思を示しますと伝えましたら、菅元総理か ら「和田さんの意思がそうであるならば、大いにやっ てください」と言っていただきました。
反対であるなら、「LGBTは天皇になるべきではない」という持論を国会で堂々と述べ議論するのが、国民から〝議〟員という立場を信託された者の責務でしょう。
それを、所属する組織内の根回しは行った上で「駄々をこねてボイコット」って、極めて幼稚な職務放棄です。
でも、(きっと和田自身も認識している)それができない理由は明白なんです。和田の理屈で行くと「皇室がLGBT差別の〝象徴〟」になってしまうのですから。
そして実際の皇室、特に秋篠宮家の皆様は、ジェンダー感覚のアップデートについて特に意識的に取り組まれています。
掲載誌である「祖国と青年」の母体である、日本協議会や日本青年協議会といった身内感覚の講演の中で気が緩んで口を滑らせたのでしょうが、和田政宗の言説は常に、多くの国民や、皇室の意識からも遊離した、特定の思想を持つ支持層に向けたものになっています。
和田政宗が表層で示す「尊皇心っぽいもの」は、その実「皇室を『自説の道具』にしたいだけ」の言説であり、自民党比例全国区で参議院議員という公的な立場を得ながらも、その行動の実態は「偏向した思想の運動家」としか呼べないものです。
これから複数回にわたり、単なる「小林よしのりへの誹謗中傷」にとどまらない、和田政宗という政治家の欺瞞について追求して行きます。