自民党・和田政宗参議院議員は、講演の中で
私は何より、命をかけて皇室を守ることが私の人生であり、私の政治家としての使命であると思っております。
もし天皇陛下に何かしらの危難が迫るのであれば、自分の命と引き換えに身を挺すのは当然のことと思っ ています。
とまで言い、自身が尊皇家であるとアピールしています。
しかし、その観点で行くと、後の段の見出しを奇妙に感じます。
SNSや雑誌等には、秋篠宮家の皆様だけでなく、天皇陛下ご一家、上皇・上皇后ご夫妻など、あらゆる皇族の皆様に向けて常軌を逸したレベルのバッシングが流布しています。
しかし和田の言説は、秋篠宮家のみがバッシングを受けているようなものになっている。それは何故か?
実はそれこそが、「小林よしのりは愛子天皇論などを通じて、SNS に事実ではない情報を流しバッシングをけしかけている」という虚偽発言にもつながる所。和田は、「皇室典範が改正され、愛子さまが皇太子になる」という、憲法上何の問題も無い事象に対し(相対的に皇位継承順が下がる事を理由に)秋篠宮家を貶めるバッシングだと印象操作したいのです。
しかし、和田の政治姿勢を見ると、本当に秋篠宮家の皆様の思いに心を巡らせ、真摯に努めているようには思えません。前回の記事で書いたように、秋篠宮家の皆様が熱心に取り組まれているジェンダー平等に深く関連する法案の採決において、賛成・反対のどちらであっても国民から信託された権利の行使という義務を負いながら、退場してボイコットするという極めて幼稚な行いをするぐらいですから。
和田が尊んでいるのは、皇室の皆様という人間ではなく「男の血」でしかありません。
和田は講演の中でこう述べます。
悠仁親王殿下が即位されたときに同じ世代に皇族がおられないことは、悠仁親王殿下の妃殿下となられた方が男子を授からなくてはならないというプレッシャーにもなり、まさに皇室の危機です。
わかってんじゃん!
そしてその危機は、「男系男子」という呪縛を取り払わない限り、皇室に存亡の危機をもたらし続けます。
もし仮に違憲の疑義を無視してまで旧宮家の子孫を養子に迎えたとしても、戦後たった80年のうちに、11の旧宮家のうち2/3で既に男系子孫が途絶えている事からも、未来に渡る安定的な皇位継承には全くつながらない事がわかります。
なお、上記発言の含まれる段の見出しは
というもので、前半で安倍元首相への恩義を訥々と語った後、急に脈絡なく悠仁さまの話になります(この講演、まったく関係ない主張の最後に、取ってつけたように少しだけ皇室の事を付け足す箇所が本当に多い)。
和田は締めくくりの部分で
こうした現状をもたらした元凶は、先の敗戦によっ て行われたGH Qの占領政策です。今年は戦後八十年 ですが、しつかりとこの状況を打破して、皇室の未来 永劫の繁栄、我が国の未来永劫の繁栄につなげていかなくてはなりません。二千六百八十五年にわたる我が 国を未来永劫発展させるための年が今年だと心に定めて、皆様方とともに強い意志を持って行動していきま す。
と述べていますが…
その一方、安倍元首相は2019年3月20日の参議院財政金融委員会において、こう答弁しています。
安倍元首相も、もはや旧宮家の子孫を皇族にするのは不可能であると認識していたのでしょう。
和田の言葉は、国民や皇室ではなく「自らに利をもたらしてくれる内側」に向けてのものばかりですが、その「内側」にさえ空虚にしか響かない、スカスカのものである事がよくわかります。
次回に続く