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高森明勅
2010.7.5 13:56

伊勢神宮と新嘗祭

これまで、最新のアカデミックな神道史書である『日本神道史』に示された岡田荘司氏の神道「成立」論をめぐり、2回ほど私なりの感想を述べた。

私にとっては大切なテーマなので、もう一度だけ触れておきたい。

同書の中で岡田氏は「神道の信仰体系は、古代以来の神社と祭祀とに備わって」いると仰っている。

まことにに妥当な指摘だ。

ではその神社の中で最も尊いのは?言うまでもなく、伊勢の神宮に他ならない。

では伊勢神宮の起源はいつか?岡田氏は『日本書紀』などの古伝を尊重し、さらに考古学上の成果も活用して、垂仁天皇の時代だった可能性を強く示唆されている(『歴史読本』平成2年4月号)。

古墳時代前期(3世紀後半~4世紀前半)にあたる。

また神道の祭祀で最も重要なのは?もちろん新嘗祭(にいなめさい)であることに、専門家は誰しも異論を挟まないはずだ。

ではその起源は?岡田氏の意見は次の通り。

「共同体における新嘗の淵源は弥生時代まで遡ると思われるが、体系的な新嘗は、纏向(まきむく)に開花したとみられる」(『大嘗の祭り』)
ここにある纏向とは、奈良県にある古墳時代前期の纏向遺跡のこと。

つまり「体系的な新嘗」の起こりを古墳時代前期と見ておられるのだ。

ということは、岡田氏の見解では、神道の信仰体系を構成する主な要素は神社と祭祀で、その神社で最も尊い伊勢神宮も、祭祀で最も重要な新嘗の神事も、ともに古墳時代前期に起源を求めることが出来ることになる。

私もその考えにほぼ賛成だ。

であれば、普通に考えると、古墳時代前期には神道もすでに「成立」していたという結論になるのではあるまいか。

ところが岡田氏は、数百年後の7世紀後半・8世紀に神道が「成立」したとされる。

一般には、なかなか素直に受け入れにくい見方のように思われるが、どうだろうか。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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