ゴー宣ネット道場

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切通理作
2010.9.6 18:16

今日はノープラントーク

   
       

   みなさんこんにちは。
  
   次回ゴー宣道場に宮城能彦さんの代打で出ることになり、焦っている切通です。

   あわてて『劇場政治の誤算』『テロルの新犯人』『創造するリベラル』(姜尚中氏との共著)など加藤紘一さんのご著書を読み、メモを取っている次第です。

  なにしろ政治家の方と同席して何か喋る機会なんて、いままでほとんどありませんでしたから。

  僕は普段、仕事で誰かと会う機会といったら特撮映画とかピンク映画のスタッフや出演者にインタビューすることが多い人間です。役者さん、プロデューサーや監督、脚本家といったメインスタッフはもちろん、録音、編集、カメラマン、怪獣やヒーローの繰り出す光線を描く名人など、映画に関わる人の話が好きなんです。
  僕自身はペン一つあれば出来る物書きだからこそ、一人で全部は出来ない映画の世界で自分の職能や持ち味を出せる人に惹かれます。

  中でも特撮映画とかピンク映画が好きなのは、通常のドラマ部分の間に、ぬいぐるみを着たり服を脱いだりして特別に作った「見せ場」としての非日常があり、全体的にはともすれば不協和音になりがちなのにギリギリのところで成り立たせるメリハリが素敵だなと思えるからです。

  小林よしのりさんから「お堅いことでなくていいから、たまには自分の日常や、普段している仕事のことを書いたら?」とおっしゃっていただいたので、ゴー宣道場にアクセスする人にとって面白いかどうかわかりませんが、書いてみます。

  家にいるときは、毎日だいたい並行して2つか3つの事をやっています。
  お堅い本を読みながら原稿書いて映画のDVD見るのを並行してたりします。
  本だったら一章読む、原稿だったら1ページ書く、映画だったら30分見て一時停止する、というのを繰り返したり。
  もちろんしめきりが近づくなど追い込みの時は一つに集中しますが、その時一挙になだれこむカタルシスを味わうためにも、普段は並行して違うことをやっている「日常」があります。
 
  頭の中が混乱するかとお思いでしょうが、意外にそうでもないんです。
  一遍に四つ以上のことをやるとさすがに疲れますが、三つぐらいまでだったら結構ノリノリですよ!
  かえって脳が刺激されるのです。

  それに、カッコつけて言えば、異なる世界どうしでも、それぞれに生きる<人>のあり方はどこか共通していると思うんです。

  特撮関係の連載の一つに「特撮ニュータイプ」という角川書店の雑誌でやらせていただいている、『プロジェクト昭和特撮』という、特撮版プロジェクトXみたいなものがあります。
  今出ている回はキャスティングプロデューサーの人に取材しています。キャスティングプロデューサーというのは、映画やテレビの配役を決めて交渉する役目の人です。芝居の出来ない新人には経験者を共演させるなど、バランスも考えます。

  僕が取材した方は安藤実さんといってマネージャー出身なのですが、現場とのかかわりはナント小学生の時からで、仮面ライダーとかヒーローが好きだったので自分でスタジオに電話をかけて見学してたのです。
  藤岡弘、さんからも可愛がられ、『超人バロム・1』という子どもが変身するヒーローものの主役の子役の人とも親友になり、一緒に遊んでいたそうです。

  中学に入ってからはスタントを手伝わされ、戦闘員の中に入っていたりしました。
  やがて中学を卒業する時、心配した東映のプロデューサーが「マネージャーになったらどうか」と言ってくれてそういう会社に入ります。
  いろんな撮影スタジオに出向き、雑談しながら所属タレントを売り込める時には売り込む、という仕事から始めたそうですが、もともと撮影現場で知られていた氏にはお手のものでした。

  以後現在に至るまで、ずうっと俳優さんのサポートをし続けていて、正規のマネージャーの仕事としてでなくても、紹介を頼まれると顔をつなぎ、やめたり休業したりしている役者さんにも氏を通してだと連絡がつくようになっています。
  
  自分がキャスティングプロデューサーをしている撮影現場には許される限り出向き、終わったら役者さんと助監督を連れて酒場に行き、全体の半額はポケットマネーから負担します。
  そして役者さんの「愚痴」を聞いてあげて、でも不満が高まらないように「ガス抜き」をするというのです。

  小林よしのりさんと加藤紘一さんの対談が収められた『希望の国・日本』を読んだ方には話が通じるかと思いますが、地方の農村社会に置き換えると、従来地域の「顔」となる人がいて、人知れず共同体の手助けをし、忙しい時は一升瓶を差し入れ、礼を言われても「まあまあいいから」と受け流し、表立って意見を言わない時も実はみんなの愚痴を吸収していた……そんなあり方に重なるなあ、なんて思ったのです。

  社会って、こういう人が居ることで成り立ってきたんだなあって。芸能界みたいに、お互い少しでも目立ってシノギを削っているような世界にも、ただバラバラな才能があるだけではなく、「社会」の層がちゃんとある。
    
  我が強く、撮影現場でスタッフに不愉快な思いをさせる役者には二度と声をかけないと安藤さんは言います。
  ただし、よほど売れていて、その人でないとダメだと監督やプロデューサーといったメインスタッフが思っている場合は別だというのです。

  ここで僕は加藤紘一さんの「強いリベラル」という言葉を思い出しました……と言ったら、さすがにこじつけすぎでしょうか。
  でも共同性があった上で、そこを乗り越える強い力を持つ人もいる……ってのが、いい社会なんじゃないかって気がします。

  そんな感じで、違うことを並行していても、否、違うからこそ、普遍的なもの、本質的なものを時折見出せた気になると楽しいのです。
 と、話のオチをつけてみました。

  今回はとりとめもなく仕事の日常で感じた話をしてしまいましたが、つまらなかったらご容赦を!

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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